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長南町認知症サポート医〔上野秀樹先生〕の認知症見立て塾【第25回】

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千葉県長南町

今月はうつ病に伴う妄想、貧困妄想についてご説明します。
高齢者の方にうつ病が合併することは多くあります。私がもの忘れ外来をしていると、かなりの割合の方に程度は様々ですが、うつ病が認められます。特に気をつけなくてはいけないのが、うつ病に伴う妄想です。うつ病では「自分の価値を実際よりも過小評価してしまう微小妄想」が認められることがあるのです。
今回は、経済的な側面で自分の価値を過小評価してしまう貧困妄想をご説明しましょう。

<70歳女性>
3人の子供を育て上げ、3年前に夫はがんで亡くなった後は、単身生活をしていました。1年ほど前に長男の借金問題があり、本人のところにも取り立てが来たりして、困っていたといいます。半年ほど前から眠れないと友人に訴えることが多くなりました。ここ数日間、姿を見かけなくなり、不審に思った大家さんが息子さんに連絡して一緒に訪問したところ、ベッドの上で倒れている本人を発見しました。救急搬送されましたが、さいわい命に別状はなく、1週間ほど入院して退院することができました。

長男の借金問題は解決したものの、本人にとっては大変な精神的負担になったようでした。その後、眠れないという訴えが出ています。さまざまな精神疾患の最初の症状として不眠が認められることが多いのです。
不眠には、
・寝付きが悪い➡入眠困難
・途中で目が覚めてしまう➡中途覚醒
・朝早く目が覚めてしまう➡早朝覚醒
・熟睡した感じがしない➡熟眠障害
などがあります。うつ病では、このうち早朝覚醒タイプの不眠が認められることが多いです。
例えば、毎日22時頃に就床し、いつもは朝6時頃まで眠れていた人が、午前2時、3時になると目が覚めてしまい、その後再入眠ができなくて困ってしまうような不眠です。
このケースでは、その後「お金がない」と友人に訴えることがあったようです。実際にはそれなりの貯蓄と年金収入があり、お金に困る状態ではありませんでした。貧困妄想です。買い物に誘われても、「お金がないから」と言って行かなくなり、食事をとらず、水だけ飲んで過ごしていたようです。
実際には金銭的に問題がないのに、なぜ「お金がない」と思い込んでしまうのでしょうか。これにはうつ病の症状の一つ、「不安」が関係しています。将来の生活に強い不安があると、どんなにお金があっても十分とは思えなくなってしまうのです。うつ病の貧困妄想では、「お金が支払えないから、食事を食べてはいけない」と思い込んで、食事を食べなくなることや「公共料金を支払えないので、家を借金のカタに取られてしまった。もう自分の家ではない」と思い込んで徘徊してしまったケースもありました。早めに周囲の人が気づいて、適切な治療をすることが重要です。
次回もうつ病に関してご紹介します。

■YouTube「長南町福祉チャンネル」が開設されています。上野先生のこれまでの解説動画はこちらからご覧ください。
※2次元コードは本紙をご確認ください

■上野先生から認知症について学ぶ学習会を開催します。
ぜひご参加ください。
日時:8月16日(水)15時〜16時(要事前申込)
場所:保健センター

問い合わせ(申込先):福祉課 包括支援センター
【電話】46-2116

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