■香取遺産を未来へつなぐ
香取遺産は、多くの人たちの思いとともに受け継がれてきました。この文化財を、未来へ伝えるために活動する人たちを紹介します。
◇文化財を修復~飯泉 太子宗(いいずみ としたか)さん
美術院国宝修理所、吉備文化財修復所での勤務を経て、古仏修復工房を設立しました。主に関東で仏像・文化財の修復を手掛けています。
仏像の修復は少し特殊で、文化財として修理するなら、古いところに価値があるので、古い所は古い感じが見えるようにし、壊れている所も壊れているなりに直します。けれど、お寺に収蔵されている仏像は、信仰の対象で実用品。足りない所は作って、できるだけ見栄えを良くしたいという要望がある。きれいにはするけど、そこに歴史的なものも感じさせる修理となると、どう両立させるのかが難しく正解がないので、毎回手探りです。
修復中は徹底的に記録を取ります。分解した中から納入品が出てきたり、文字が書いてあったりすることもあり、修理のときにしか分からないことは多いです。誰がいつ作ったとか、誰が修理したとか、関係者の名前はよく出るので、由緒不明で年代も分からなかった仏像の由来が判明したこともあります。地元の歴史と結び付く名前が出たりすると、とても面白いですね。
文化財の保存には日々の管理が欠かせません。地域で管理しきれなくなった場合は、市が引き継ぐような仕組みが整備されるといいと思います。地域の調査も、しっかりしておくべきですね。もし失われてしまっても、何が失われたかが分かりますから。
ぜひ、自分の身近なお寺や地域の文化財に興味を持ってください。知ってみると、そこには意外なほど歴史を感じるものがあるはずです。
◇伝統芸能を継承~山倉芸能保存会
山倉芸能保存会は昭和42年に地元有志により発足しました。明治の頃は下座連と神楽連とで活動していたのが、次第に継続が難しくなり、10年ほど途絶えてしまったそうです。そこで、このままではいけないと有志が立ち上げた保存会が今日に至っています。
現在は、毎年4月の第1日曜日に行われる村祈祷(きとう)祭の神楽奉納や、12月の第1日曜日に行われる例大祭(山倉の鮭祭り)の下座囃子(ばやし)演奏を中心に活動しています。
コロナ禍以降、祭礼行事も中止・縮小が続いていましたが、今年度は4年ぶりに以前と同じ規模で例大祭が開催できました。先輩たちが長年継承してきたものをつないでいきたい、一人でも多くの人に神社に参拝してほしい、そのために祭りを盛り上げたいという思いで取り組んできたので、皆さんに楽しんでもらうことができ、喜びや満足感を感じています。
楽器や衣装など、道具の経年劣化が進んでいるため、修繕には民間の支援金を活用したりしています。地元の伝統芸能継承のため、行政でも積極的な取り組みをお願いしたいです。
私たちのような団体は、どこも同じような悩みを抱えているかと思いますが、会員の減少や後継者不足が一番の悩みです。小学生を対象にした下座練習を開催し、後継者育成を図りましたが、中学、高校と進学するにつれ、練習に来なくなってしまうことが多いです。さらにコロナ禍以降は、感染防止の観点や祭礼行事の縮小により練習そのものが行えず、後継者育成は最重要課題になっています。
幼い頃から祭りの笛や太鼓の音色を聞いて育つので、自分もやってみたいと、小学生の頃から参加している人もいます。地域の人と世代を超えた交流ができるのも、この活動の良いところです。ぜひ地元の伝統に興味を持っていただければと思います。
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