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自治体の皆さまへ

特集 私らしく、あなたらしく。—多様な「性」を考える—(2)

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埼玉県加須市

【当事者の方にインタビュー】
◆誰もが抱え込まず、相談できるようになるといいですね。
interviewee1 星晴樹さん
栃木県那須塩原市出身。トランスジェンダー(戸籍は女性、性自認は男性)。20代の頃、数カ月間を加須市で過ごす。現在は、栃木県那須塩原市でキッチンカーを経営。

○自身の性を意識したきっかけは?
幼い頃から、洋服やおもちゃなどは男子向けのものを好み、なんとなく周りと違うと感じていました。高校1年生のとき、男性と付き合ったこともありましたが、やはり女性として扱われることに強い違和感があり、1カ月で別れてしまいました。言葉にできない違和感や自分のことが分からない苦しさで、その後しばらく、学校に通えなくなってしまいました。両親に理由を聞かれても「育て方が悪かったんじゃないか」と悲しませてしまう気がして、当時は相談できませんでした。
時が経ち、少し落ち着いてきた頃、インターネットで自分と同じ悩みを抱えている人がいないかを調べ始め、性同一性障害という言葉を知りました。そして、自分が「男性として見られたかった」ことが分かってきました。高校卒業後には、私を男性として見てくれる女性と付き合うことができました。このとき初めて、ありのままの自分を受け入れてもらえた気がしました。

○周囲の人や社会に望むことは?
当事者の大半が、周りに相談するのをためらったり、できないでいたりします。それは「伝え方が分からない」「いじめられたり、相談したことを勝手に周囲に広められたらどうしよう」と一人で抱え込んでしまうからだと思います。
性のあり方の違いを意識する場面はありますが、人の性を決め付ける必要はないのではないでしょうか。最近は、価値観が多様になってきていて、男だから女だからと二極化しない考え方が広がりつつあると思います。仕事でお店に立っていても、私のような性のあり方について「知っているよ」と言ってくれる人が増えているようにも感じます。
自身の性について悩んでいる人は、気が付かないだけで意外と近くにいます。誰に対しても「そうかもしれない」と考える気持ちを持って接してもらいたいです。また、どのような性のあり方に対しても、特別扱いをしたり、必要以上に気を遣い過ぎないでもらえたら嬉しいです。

○悩んでいる人に伝えたいことは?
近くでなくても、理解してくれる人はきっといます。一人で無理して抱え込もうとせず、もっと周りに頼ってもいいはずです。人に話すことで、気持ちの整理ができることもあります。直接話すのが難しい場合は、メールや手紙など、文字で伝える方法もあります。もし、私の存在が、悩んでいる人が一歩を踏み出す力になれたなら、嬉しいです。

取材協力:ひつじ珈琲ハーモニーホール店(栃木県大田原市本町)

◆家族へのカミングアウトを経て
interviewee2 市内在住のAさん
元トランスジェンダー(出生時の戸籍は女性、性自認は男性)。現在は、性別適合手術を受け、戸籍は男性に変更している。

○カミングアウトしようと思った理由は?
大学2年生のとき、性別適合手術を受けたいこと、戸籍を男性に変えたいことを、両親に伝えました。そのとき、母から「手術をするなら縁を切る」と反対されてしまいました。いつか自分に大切な人ができたら、親に隠さず家族ぐるみの付き合いをしたい。家族が好きだからこそ、一緒に過ごす楽しい時間を想像してカミングアウトしたのに「どうして?」と思いました。その後は、両親とはなるべく性に関わる話題にならないように避けて過ごしていました。

○ご両親との和解のきっかけは?
今のパートナーとの出会いが大きいと思います。「性別ではなく、あなたの人柄が好き」と私を特別扱いしない彼女のそばでは、自然体でいられました。彼女と出会って3年後、性別適合手術を受けました。母の言葉が忘れられず、両親に報告すべきか悩みましたが、彼女が「親だからこそ、ちゃんと伝えよう」と背中を押してくれて、二人で報告に行きました。このときには、母の反応も変わっていて、私の性を受け入れようとしてくれていました。葛藤はあったと思いますが、本当に嬉しかったです。
自分が家族を持ち、二児のパパになれるなんて、数年前は想像もできませんでした。両親が私にしてくれたように、愛情を伝え、家族を大切にしていきたいです。

○現在悩んでいる人に伝えたいことは?
誰しも悩みがあり、人に言えないものもあります。つらいのに無理をして言う必要はありません。ただ、その悩みを真摯に聞いてくれる人は必ずいます。あなたの居場所はちゃんとあります。大丈夫!どんなことがあっても味方はいます。

◆Aさんのお母さん
○どのようなお子さんでしたか?
4歳の頃、夫婦で体調を崩してしまったときに看病しようとしてくれたり、いつも親を大切にしてくれる、しっかりした子という印象でした。

○カミングアウト時のお気持ちは?
「女の子として育ててきたのにどうして?」と取り乱し、そのときは子どもと一緒に死のうとまで思い詰めていました。子どもの思いを受け入れられない気持ちと同時に「男の子に生んであげられなくてごめんね」という思いもありましたが、こうした葛藤を含め、誰にも相談できずにいました。今振り返ると、一番つらい思いをしていた本人の相談にもっと乗ってあげたかったですが、当時はそう思えるだけの余裕がありませんでした。

○今はどのようにお考えですか?
時が経ち、冷静に考えられるようになると、自然と性的少数者の方に関するニュースが気になるようになっていました。「こんなニュースがやっていたけど、あなたにとってはどうなの?」と、電話などで子どもと話をするようになりました。子ども自身、自分の性について隠そうとしておらず、変わらず接してくれるその様子から、カミングアウトによって子どもの中身が変わったわけではないことに気付きました。今、私の子どもは、素晴らしい人と巡り合えて、家族も子どももできて、幸せ者だと思います。これからも後悔をしない人生を送ってほしいです。私もお父さんも、どんなときでも子どもの味方でいたいと思っています。

○子どもの性について悩んでいる人に伝えたいことは?
カミングアウトをされたとき、私がそうであったように、初めは受け入れられないかもしれません。でも「どんなに時間がかかっても親として子どもから逃げないこと」「子どもと向き合って話し合える関係を、日頃から築いていくこと」が大切なのではないかと感じています。

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