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不滅の福澤プロジェクト 記念対談(2)

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大分県中津市

■故郷・中津への思い
都倉准教授:『学問のすゝめ』は、学問をどう社会に生かしていくかという部分と、社会参加を呼びかけた激励の本という部分があると思います。慶應義塾の「ガクモンノススメ」プロジェクトは、伊藤塾長がリーダーシップをとって進めています。さまざまな人と対談で『学問のすゝめ』について語り合っていますが、プロジェクトの狙いや伊藤塾長にとってのお気に入りの部分について聞かせてください。

伊藤塾長:福澤先生の生きた世界の状況と今は、非常に先行き不透明な時代という点で似通っています。平和で豊かな良い社会をつくるため、みんなが信じる良いストーリーをつくっていくことが今一番我々に求められていることであり、実は、その良いストーリーをつくるということを、福澤先生は様々な著述で行いました。プロジェクトを進めていて興味深いのは、いろんな塾生と『学問のすゝめ』について話をしていると、一人一人、響く場所が全然違うということです。それだけ『学問のすゝめ』にはさまざまな引き出しが用意されています。私自身に響く場所はやはり、福澤諭吉が英語のソサエティーを「人間交際(じんかんこうさい)」と訳したところです。福澤は、学術的なデータに基づく論理的な組み立てをサイエンスとし、大切にしました。でも、「こうすればいい」と分かっていても、人間がそれを実際にやるかどうかは別問題だということも理解していました。理屈だけでなく、人間性を大切にし、みんなで話し合いながら「それならやってみよう」という方向に持っていくために、単に「社会」とせず「人間交際」という言葉を充てたことが一番の驚きです。

都倉准教授:『学問のすゝめ』には、もともと中津のために書かれたという側面もあります。「中津の人に向けて」といった言葉も繰り返し出てきます。奥塚市長はどういったところに注目していますか。

奥塚市長:福澤先生が中津を意識しながら語ってくれている点が、我々にとってはビッグなプレゼントだと思っています。『学問のすゝめ』の初編は、中津市学校の学生に向けて書かれたもので、9編と10編には「中津の旧友に贈る」という言葉が出てきます。「衣食住をしっかり得て独立することが大切だ」「人間は社会的動物だから、交際することによって活動の幅を広げて、より良い社会をつくり、未来に引き継いでいく。そのために学問をするんだよ」と書かれています。また、「現在は、昔の人の努力によってここまで築き上げられたものだから、我々は昔の人に感謝しなければいけない。今の我々が、未来の人にありがとうと感謝されるぐらいのことをしないと世の中は進歩しない」という内容もあります。『福翁自伝』の中には、「もう中津は嫌だ」という一節が出てきて大変ショックを受けましたが、それは先生独特の効果的な書き方なんですね。本心は中津に対する愛情が非常に深く、苦言や厳しいことを言うけれど、新時代における中津がどのようにしたらいいか、激励やアドバイスを送ってくれていたのだと思います。同時に、中津市に対する宿題でもあります。我々はそれを謙虚に受け止めて返事をしないといけない。それがまさに「不滅の福澤プロジェクト」です。

伊藤塾長:『学問のすゝめ』の17編のうち、中津に贈る章の部分の書き方は明らかに違っています。国民全体に話すのとは全然違う書きっぷりです。それだけ、自分の故郷・中津の人に対して高い要求をしている。だからこその力のこもった素晴らしい内容だと思います。

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