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ふるさとの文化財探訪 第109回

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大分県九重町

『キジを国鳥とした日本の文化』

文化財調査員 阿部秀幸

今回は日本の国鳥・キジについて取り上げたいと思います。
キジは昭和22年、日本鳥学会において日本の国鳥に指定されました。国鳥を定めている国はたくさんあり、アメリカはハクトウワシ、インドはインドクジャク、フィンランドはオオハクチョウ…とそれぞれの国をイメージできたり、「ああなるほど」と思わせられたりする鳥が国鳥に選ばれている印象があります。では、日本の国鳥であるキジに対して、日本人である皆さんはどのようなイメージを持たれるでしょうか?
キジと言えば、確かになんとなく日本っぽい鳥ではあると感じられると思います。とは言え、数ある鳥の中で日本を象徴する鳥を一種だけ選ぶのであれば、違う鳥を候補としてあげる方も多いのではないでしょうか?例えば、タンチョウやトキなどは有力な候補としてあがりそうです。これらを押しのけてキジが選ばれたのにはもちろん理由があります。整理してまとめると次のようになります。
1 日本固有種である
2 留鳥で1年中姿を見ることができ、人里近くに生息する
3 美しい鳥で、関心を持つ人が好きになれる
4 大型で肉味が良い。狩猟の対象として最適である
5 古事記・日本書紀といった古文献にも登場し,桃太郎に登場する動物として子どもたちも知っている。
6 オスの飛び立つ姿は力強く男性的、メスは「焼け野のきぎす(野を焼かれても巣から離れず、卵やヒナを守る)」のたとえにあるように非常に母性愛が強い。
国鳥を選定した当時は、これらが国鳥の重点項目として考慮されたようです。タンチョウやトキも日本的な鳥ではありますが、1や4に当てはまりません。現代の感覚では、4や6の項目に対しては「国鳥が狩猟対象ってどうなの?」や「ジェンダーフリーの時代に男性的だとか母性愛だとかは時代遅れでは?」といった意見もありそうですね。国鳥選定の経緯を見ると、当時の社会の感覚といったものも感じられます。
とは言えどもキジは時代が変わっても国鳥にふさわしい鳥であるという点は変わらないのではないかと思います。キジを美しいと感じる感性や桃太郎などを通してなじみ深いという点は、我々が世代を重ねても変わることなく受け継がれていくことと思います。時代と共に様々なものが移り変わりますが、日本人の琴線に触れる文化の根っこはいつまでも変わらないのかもしれません。

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