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【特集】未来へつなぐ 公共交通(2)

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大分県豊後大野市

■出かける目的と移動を一体的に考える 県・大学と連携し、土師振興協議会で社会実験を開催
豊後大野市地域公共交通活性化協議会では、公共交通の利用促進のため、さまざまな取り組みを行っています。
昨年11月24日には、公共交通を取り巻く課題解決の取り組みとして、土師振興協議会に協力いただき、市・大分大学・県が連携して社会実験を実施しました。この実験では、現在のコミュニティバスの利用実態を踏まえ、今後の高齢化社会に対応した新しい移動の形と生活サービスの提供方法の形を探りました。
その中で、お出かけする目的と移動を一体的に考え、お出かけに必要なものを地域拠点に集め、参加者は「あいのりタクシー」を使って地域拠点まで来てもらいました。「サービス提供者」と「サービスを受ける方(住民)」のお互いが歩み寄ることで、持続可能な地域社会の構築の可能性を考えました。
今回の調査では、大分大学経済学部大井ゼミに協力いただき、事前に大学生が土師振興協議会の各戸へ聞き取り調査を行いました。調査結果を参考に、集落内を循環しているコミュニティバスを「予約型あいのりタクシー」へ運行形態を見直した場合の検証や、集落対策として、移動サービスを活用した地域拠点での賑わいづくりの効果を検証しました。

◇MEMO
・地域公共交通活性化協議会
関係機関と連携し、地域の実情に即した輸送サービスの実現に必要となる事項を協議しています。

・豊後大野市地域公共交通計画
平成29年3月に策定した「豊後大野市公共交通網形成計画」に基づき、公共交通の利用状況や住民ニーズ、公共交通を取り巻く社会情勢などを踏まえ、令和4年6月に「豊後大野市地域公共交通計画」を策定しました。地域と行政が連携を図りながら、持続的な地域公共交通の実現のため、計画に沿ってさまざまな取り組みを進めています。

◇社会実験の様子
(1)「あいのりタクシー」であいのりして地域拠点に集まりました。
(2)スマホ相談会でスマホの操作方法を確認。スマホ相談会のほかにもマイナンバーカード相談、理容室の出張サービス、郵便局員による郵便局業務の相談会を実施。
(3)大分県の協力でオンライン診察を実施。移動診療車の中では看護師が診察の補助をしながら、画面越しに医師が遠隔で診察。
(4)外では惣菜や日用品等の移動販売を実施。
(5)集まった方とお茶会。大学生も一緒にお茶をしながら楽しく交流しました。
参加者の声:
・定期的にできたらうれしいです。
・みんなに会えると元気になります。

◇interview
土師振興協議会 地域支援員 田尻高二(たじりこうじ)さん
土師地域はコミュニティバスが週2便くらいなので、住民は買い物や病院受診の移動手段に困っており、高齢化が進み免許返納者も増える中、外出機会もだんだん少なくなってきています。離れて暮らす子どもに送迎してもらうこともなかなかできないので、そういった解消の一助になればと、市・県・大学の皆さんとともに、「あいのりタクシー」を利用し社会実験をしました。お店や参加者への声かけは振興協議会で行い、当日は多くの方が参加しました。今回の実験は、「あいのりタクシー」の利用方法を検討するよい機会となりました。料金や運用の問題もありますが、この検証結果の活用に期待しています。

◆社会実験の結果を報告
2月24日、市役所で開催された公共交通会議で社会実験に協力した大分大学の学生の皆さんが今回の実験の研究成果と課題を報告しました。社会実験に伴い、大学生は土師地区で集落調査を3回実施し、地域課題を探り、過疎地域における高齢者の移動手段の減少や移動負担が問題と捉え、生活に根ざした公共交通の形を模索しました。
学生は、土師地域は移動制約者が多いことだけではなく、住民同士のコミュニケーションが希薄であると捉え、新たな交通サービスの提案として、地域住民の移動負担の軽減と地域のつながりをつくる場所として、地域拠点1か所で用事を済ませられる「サロン型MaaS」を提案されました。これを実現するためには、費用面や住民のデジタルディバイドの解消が課題であると報告しました。

◇MEMO
・MaaS(マース)とは
MaaSは「Mobility as a Service」の略で、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスであり、観光や医療等の目的地における交通以外のサービス等との連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にも資する重要な手段となるものです。

・デジタルディバイドとは
インターネットやパソコン等の情報通信技術を利用できる者と利用できない者との間に生じる格差のこと。

◇interview
実験に参加した大分大学経済学部大井ゼミの学生の皆さん
~住民が快適に生活できるような公共交通を~
社会実験では多くの方にご参加していただき、とても感謝しています。このイベントの中で私たちは、住民の方が地域内でのコミュニケーションをとても大事にしていると感じました。
そのため、地域内でのコミュニケーションをとる機会を守りつつも、住民の方が快適に生活できるような公共交通が求められると考えます。

◆公共交通の未来を考える
今回の実験結果は、コミュニティバスの利用実態を踏まえ、どのようにすれば持続可能な地域社会を構築できるかを考える一つの材料となりました。高齢化の進展や免許返納が増える中、公共交通の必要性はこれまで以上に高まっていきます。実験結果を参考に、豊後大野市に適したよりよい公共交通のカタチを今後も考えていきます。
公共交通は人や地域をつなぐまちの骨格として私たちの暮らしを支えてきました。これからの公共交通を守っていくためには、みんなで公共交通を支えることがカギとなってきます。バスや列車、タクシーが走る当たり前の風景を未来へつないでいくために、公共交通の未来を考えてみませんか。

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