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3・11震災文庫を読む 63

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宮城県仙台市 クリエイティブ・コモンズ

東日本大震災を語り継ぐため市民図書館に設けた「3・11震災文庫」。所蔵する約1万冊から、よりすぐりの本をご紹介します。

■震災後に励まされた本
遠藤環境農園 遠藤 源一郎

○「種をまく人」
ポール・フライシュマン/著
片岡しのぶ/訳
あすなろ書房 刊
この本は、東日本大震災の直後、職場に支援に訪れた女性が「気分転換になりましたら幸いです」と付箋を付けて、職員がくつろぐ場所に置いていったものです。幾分落ち着きを取り戻した頃に自宅で一息に読みました。感動しました。アメリカ北東部の工業都市にさまざまな国から移住してきた決して豊かではない人々が、ごみ捨て場のごみを片付け、種をまいて野菜を育てながら、それぞれが救われていく話です。
私の家も津波で流され、ウクライナや台湾からの留学生など全国から来た人々が、がれきを拾い集めてくれました。現在、自宅の隣の畑では都会に住む人たちが訪れ、野菜を栽培しながら交流を続けています。

○「洟(はな)をたらした神」
吉野せい/著
中央公論新社 刊
この本を震災後に読んで驚きました。1899年に福島県いわき市で生まれた一人の女性が70歳を過ぎてから筆を執り、農作業や身近な生き物たちの姿を生き生きと描いています。開墾地での厳しい農作業の中で励ましてくれる自然や生き物たちを、心を込めて描写しています。ある春の朝に目にした雌鶏(めんどり)の姿が鮮やかに目に浮びます。素晴らしい表現です。何度読んでも心打たれる、味わい深い本です。
私は津波が運んできたがれきを拾い続けました。震災の翌年、畑では草が勢いよく生えてきて、庭はいつしかカモミールで満開になりました。次第に生き物が戻ってきました。季節が巡ってきたのです。

紹介した本は、市民図書館でご覧いただけます

問合せ:市民図書館
【電話】261・1585

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