■ウルルと古墳
国際交流員 Adam Simmonds
趣味は、古墳巡りです。前方後円墳に代表される日本の古墳に引かれた要因の一つは、謎に包まれていることです。例えば、円墳・方墳・帆立貝形墳などの形の意味、完成当時の姿、埋葬施設の石室などの形状、副葬品の意味、被葬者の正体など、謎が多く残っています。時期や地域によって特徴が異なり、比べながら地域のつながりや発展、当時の社会を想像することも一つの楽しみです。
古墳が、亡き者を葬ったり、祭ったりするための宗教的な役割を考えると、母国・オーストラリアの先住民の聖地・ウルル(エアーズ・ロック)が思い浮かびます。世界で二番目に大きな一枚岩として知られ、観光客向けの登山が許された時代もありましたが、聖地の観光施設化を反対していたアナング族への配慮で、2019年10月に登山が禁止されました。
日本の古墳の場合、宮内庁に管理されているものなど一部を除き、自由に見学ができ、石室まで入れるものもあります。ウルルを守る先住民と同じように、古墳の被葬者や造った人たちの思いに配慮して古墳に入ることを遠慮すべきかもしれませんが、好奇心を抑えられず、つい入ってしまいます。内部を見学することで、今では知られざる被葬者らが想像の中でよみがえります。このように忘れられた人に思いを寄せることもある意味の「配慮」かもしれません。
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