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とよあけ 花マルシェ コラム

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愛知県豊明市

みちのくのしのぶもぢずりたれゆゑに乱れそめにしわれならなくに
は、皆さんご存じの百人一首に登場する恋の歌ですね。「ええ、聞き覚えがありますわ!あなたを恋する余り、心が休まらないって歌でしょ?ところでこの〈しのぶもぢずり〉って何のことかしら?」はい、これはその昔、陸奥(みちのく)の信夫(しのぶ)の里(今の福島市)の名産品であった信夫捩摺(しのぶもじずり)という草木染(くさきぞめ)のことで、忍草で摺りだした染模様(そめもよう)が捩(よじ)れている様子と、恋に乱れる忍ぶ気持ちを掛けたものらしいですね。ちなみにこの歌を詠んだのは源融(みなもとのとおる)で、光源氏のモデルと言われている人です。さらに、この歌は『伊勢物語』第一段にも引用されており、この時代かなりヒットしたようですね。「ところでお花はいつ登場するのかな?」お、そうでした。実はこのもぢずりという音を受け継いだ花があるんですよ。
「もぢずり」という植物名は『毛吹草(けふきぐさ)』(松江重頼(まつえしげより)、寛永元年刊)の明暦(めいれき)元年版巻二の六月に初めて登場します。そこから80年後、もぢずりは『諸国産物帳(しょこくさんぶつちょう)_近江国駿河版(おうみこくするがはん)(享保(きょうほう)21年)』の草類に「祢ぢ里ばな(ネヂリバナ)」と改称され、現代の学名は「ネジバナ」です。
ネジバナはユーラシア大陸からオーストラリアまで広く分布するラン科ネジバナ属の総称です。日本にもいくつか原産種があり、日本全国津々浦々で見つけることができます。「え~!これって蘭なの?よく見かける雑草だよね?蘭の仲間でも雑草扱いされるのってあるんだね!?」はい、日本に自生しているランの種類はけっこうあって、私の知り合いにも山野渓谷で野生ランを見つけ、これを現地で自然のまま観賞することを趣味にしている方が多くいらっしゃいますが、ネジバナについては、私を含め、これを保護する人はほとんどいません。
ある意味雑草扱いのネジバナだけど、まっすぐ伸びた花茎に、これを一本の毛糸で巻いていくように小さな花が連続して着く姿はとても個性的です。よく見ると小さな一輪一輪はちゃんとランの構成単位を備えています。また、ネジバナは暑さにも寒さにも強く、戸外で地植えでも栽培でき、花の後に種を採って播くこともできます。気軽に栽培できるランなので、ちょっと試してみるのもありだと思いますよ~!

執筆 愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田晶彦

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