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Re:再 アフターコロナ。再び、見つめ直し、再び、始まる。(2)

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栃木県那須塩原市

■Re:born 再生
湯場に元気な掛け声が響きわたる趣を失いかけた町が再興する物語(ストーリー)。
チョイナ チョイナ
#草津温泉
#湯もみ

湯畑で有名な草津温泉街は、群馬県草津町の中心市街地に位置する。時代の変遷によって次第に温泉街としての情緒を失いつつあった町が、平成22年から行われた「景観まちづくり事業」によって姿を変えていく。他自治体の事例をもとに、まちづくりのあり方を考えてみたい。

[温泉のまち・群馬県草津町]
群馬県北西部に位置する人口6,026人(令和5年7月1日現在)の町。北と西には三国山脈の2,000m級の山々がそびえ、一方、東と南は海抜約1,200mの高原となって開けている。日本列島のほぼ中央に位置しており、上信越高原国立公園に含まれる草津白根山周辺は太平洋と日本海の分水嶺。観光業を中心とした第3次産業が主要産業。

[景観まちづくり事業で中心市街地を再開発]
かつて老舗旅館があった2つの跡地(A敷地・B敷地)を長年、駐車場として活用。耐震化が必要だった熱乃湯(C敷地)の建て替えを含め、湯畑広場周辺に3つの拠点づくりを行う事業となった。

×渋滞[渋滞するかつての湯畑広場]
バイクや車が頻繁に往来するため、歩行者は危険と隣り合わせ。せっかくの観光も時に気を使わなければいけない場面が多かった。

×景観[湯畑広場へ通じる坂道から見たかつての風景]
車、バイク、電柱、電線、看板…湯畑広場へ通じる坂道から視界に入るものは、趣のないものばかり。

●「チョイナチョイナ」の掛け声で広がる硫黄の香り
「草津温泉」で有名な群馬県草津町。そのままでは少々熱い源泉を、約180センチメートルの木の板でかき混ぜ、成分を薄めずに温度を下げる明治期からの風習「湯もみ」。「チョイナチョイナ」の掛け声とともに行われる湯もみの模様は、草津温泉を象徴する湯畑広場に隣接する「熱乃湯(ねつのゆ)」で見学・体験できます。
その熱乃湯が、歴史と伝統を紡ぐ場として建て替えられたのは平成27年と、まちづくりの時間軸で考えればごくごく最近の話です。人口6千人余りながら、コロナ前で年間327万人を超える入込客数を記録する草津温泉。名実ともに草津ブランドを定着させたまちづくりの背景には、時間をかけた中・長期のプロジェクトの存在がありました。

●失われつつあった「情緒」 草津ブランド再興に向けた7年間
1990年代、湯畑広場周辺には、バブル崩壊とともに廃業したホテル・旅館が現れ、かつての「情緒」が失われつつありました。
来訪する観光客のためにと、湯畑広場のほど近くに約20年間設置され
ていた仮設駐車場。景観を乱すだけでなく、繁忙期には交通渋滞を引き起こし、温泉街を歩いて楽しむ観光客の危険の種になっていました。
こうした中、100年先を見据えた付加価値の高いまちづくりを目指し、景観まちづくり事業が平成22年からスタート。「時代の積層が感じられる街なみの保全」と、「温泉街の歴史をひも解きながら風情や情緒を残し、そしてよみがえらせながら新たな一颯(いぶき)と融和させる」という考えのもと、7年間にわたって再整備が行われたのです。

●銀座の中心地に駐車場が必要か?
再整備に当たって、湯畑広場の一等地に位置する2つの駐車場を新たな名所に作り変えることになりました。計画当初、このことに関して「駐車場を移設したら湯畑に訪れる人が減ってしまう」という反対の声もあったそう。しかし、地域との協議を重ねることで計画どおり整備が進み、温泉街全体が少しずつ趣を取り戻していきます。時には、黒岩町長自ら「銀座の中心地に駐車場が必要でしょうか?」と関係者を説得したこともあったようです。
平成25年、駐車場跡地に共同湯「御座之湯(ござのゆ)」を再建し、木回廊と石畳を敷いた棚田風の多目的広場「湯路(とうじ)広場」が平成26年に完成。翌年には、草津温泉の伝統文化「湯もみ」を伝承する施設「熱乃湯」が新しく生まれ変わり、湯畑広場を囲む街なみがよみがえりました。

■Re:definition 再定義
草津温泉を再定義した3つの拠点。

町民が誇れる観光客が来たくなる思いが交差する場所。

▽熱乃湯[湯もみの伝統文化を時代に引き継ぐ熱乃湯]
大正時代に数多く建てられた和洋折衷の建築スタイル「擬洋風建築」をモチーフにデザインされた。1日6回の「湯もみと踊り」ショーが披露されるほか、体験もできる。落語などの会場としても活用され、多くの観光客でにぎわっている。

▽湯治広場[地域住民・観光客の憩いの湯治広場]
浴衣姿で温泉街の風情を肌で感じてもらうための施設として、木回廊と石畳を敷いた棚田風の多目的広場「湯路広場」を設置。地域住民に活用される舞台は、同時に来場者にとって魅力ある空間となる。

▽御座之湯[明治時代の趣を残す、草津温泉の新たなシンボル・御座之湯]
草津五湯の一つに数えられ「源頼朝」ともゆかりがあるとされ、江戸明治の趣を残すたたずまいの共同湯「御座之湯」。屋根は板ぶきを用いて、温泉街の風情を演出。

▽再整備効果
入込客数(※):約265万人→300万人超
浴場施設利用者数(※):約42万人→60万人超
熱乃湯利用者数(※):約15万人→25万人超
ふるさと納税額(平成28年):約14億円(北関東1位)
テレビへの出演回数(※):45回→95回
主な受賞:
・都市景観大賞(平成29年度)
・日本トイレ大賞(平成27年度
地域ブランド調査市町村ランキング(※):全国60位→全国41位(群馬県1位)
※いずれも平成22年度→平成27年度比較。

取材協力:群馬県草津町

●観光客を魅了する拠点の完成地域ぐるみのまちづくりに発展
3つの拠点整備が完了後、周辺地域では積極的に店先の修景工事や街路灯照明の暖色化が実施され、官民が一体となった地道なまちづくり活動が進められることとなりました。これによって、温泉街全体の情緒や風情をさらに向上させることとなり、町民、観光客にとってより思い入れのある街並みに変わっていく循環が生まれています。

●中心市街地の再開発が町全体のプラスに
草津町での事例は、草津町の中心市街地である温泉街全体を一つのエリアと捉えて、「地域や観光客にとって何が必要か」ということを具体化し再整備につなげたもの。6年余りのプロジェクトによって、さまざまな好材料が、まち全体にもたらされたと言えます。

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