文字サイズ
自治体の皆さまへ

[特集]自然と共に生きる農業 (4)

8/40

熊本県宇城市

■農業から自然を学ぶ
7月19日、市は独立行政法人国際協力機構(JICA(ジャイカ))と協定を締結。青年海外協力隊でガーナ共和国に派遣予定の松田靖大(やすひろ)さんが、派遣前に国内の地域活性化や地方創生を体験するグローカルプログラムとして三角町の(有)宮川洋蘭と(株)イノPを拠点に活動した。

◇地域課題を身近に感じる
松田さんは、途上国の貧困問題に興味を持ち、明治大学在学中には1年間休学してタイの国連食糧農業機関で勤務。卒業後は食肉の生産から販売までを担う日本ハム(株)に就職し、営業やマーケティングを担当した。
(有)宮川洋蘭と(株)イノPでは、10月からの本格研修に先駆け、9月24日までの約2カ月間、主に農業を通して地域の課題解決に向けた実践経験を積んだ。
「この研修は、期間中自分が現場から求められているものに応えること、さらに自分にしかできないものを見つけることがテーマ。洋ランやイチゴの栽培とその準備、ICT機器を使った鳥獣被害対策の現場や県内各地で行われた対策勉強会にも参加しました。」と松田さん。
その中で、思っていたより地域の課題に対し、危機感を感じたと話す。「数年前までは耕作していた果樹園が、高齢化などで経営者が離農し、荒廃してくるとイノシシが集落まで下りてくる。そんな現場に直面したことで、来る前よりも当事者意識を持てるようになりました。」

◇経験を次に生かす
地域のカラス研究者に提供する餌として子どものイノシシ、ウリ坊の解体も体験。「課題を地域の宝に変える方法を身を持って学びました。」と話す。
また、イチゴ狩りで残った冷凍イチゴをジェラート販売者へ売り込んで販路を開拓するなど、独自のスキルを生かした。
「2カ月間って短い。皆さんに本当に良くしていただき、地域課題を身近に体感しました。微力だけど無力ではない――。今後取り組む貧困問題も、一人のわずかな力ではありますが、世界規模の課題の解決に向けて少しでも貢献できたらと思います。」と力強く語った。

■[voice]農業や地域づくりを通じて宇城市ファンを増やしていきたい
(有)宮川洋蘭 (株)イノP 代表 宮川 将人(まさひと)さん

「地球規模で考え、地域で行動する」がテーマの私たちにとって、世界に飛び出す研修生との出会いは大きなチャンス。松田さんには私たちが再生させた空き家に滞在し、幅広く密度の濃い体験をしてもらいました。元営業マンの彼が積極的に動く姿から、自分たちも遠慮がちで「待ち」の姿勢だったと気付かされました。
地域に根付く農家が元気なら地域も活性化します。農業を通じて地域のファンを増やしていけるように頑張っていきます。

◇(株)イノP
地域課題解決型事業として2016年に始めた農家ハンター活動をきっかけに、三角中の同級生2人で2019年に設立。防護柵や罠の設置、捕獲などの鳥獣被害対策、イノシシの解体加工などのジビエの活用、耕作放棄地再生畑での管理や収穫などの農業生産を行う。第1回くまもとSDGsアワード優秀賞を受賞。

■今を耕し、未来のために 自然と生きる
世界で達成すべき17の目標「SDGs(エスディージーズ)」が提唱されて8年。持続可能な開発目標は今や広く浸透し、取り組むことが当たり前となった。

農業ももちろん、その一つ。

澤村輝彦さんは、未来の子どもたちへ届けたいという思いで有機農業を開始。年間を通して栽培できる環境を整えた。

角心拓也さんは、物価高騰を見据え、土壌づくりでエノキの菌床を肥料にして経費を抑えた。

三角サトウキビ活性会は、江戸時代から続く栽培方法と黒砂糖作りの文化を途絶えさせないように、地域を巻き込んで新たなムーブメントを起こした。

戸馳の米農家たちは、「戸馳愛」の下、グループを作り戸馳の農地を守ろうと活動を始めた。

これらは全て、未来のためのSDGsの取り組み。

持続可能な方法を探し出し、将来の地域や子どもたちの世代に何が残せるのかを考えた先の農業だ。

まだ道半ば。今後も出会う自然の摂理と対峙(たいじ)し、向き合い、新たな方法を模索することも必要となる。

だからこそ、自然と共に生きる農業――。探求は続く。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU