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[特集]命を救う最前線~救急搬送件数が過去最多~(2)

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神奈川県平塚市

◆病院に「命」をつなげる
平塚市では、市民が救急車要請の電話をしてから患者を医師に引き継ぐまでの時間は30分30秒(令和4年実績)。県内平均の43分48秒より大幅に早い。市民病院や平塚共済病院などの大きい病院があり、救急患者を積極的に受け入れているからこその数字だ。

◇受け入れ数が全国トップクラス
厚生労働省が発表する『令和4年救命救急センターの評価結果(実数)』によると、全国300カ所の救命救急センターのうち、市民病院の年間受け入れ救急車搬送人数は1万681人。県内で4番目、全国でも11番目に多い人数だ。そのうち76・7パーセントは、市内からの搬送が占める。救急搬送を受け入れる割合である「応需率」は、令和4年実績で98パーセント。断らない救急を実践する、湘南西部地域の救急医療を担う最前線だ。
市民病院の救命救急センターは救急外来と20床の救急病棟があり、医師は救急科専門医2人、専任医1人、兼任医9人。看護師は救急看護認定看護師や小児プライマリーケア認定看護師、集中ケア認定看護師などの高度な専門知識を持った職員を含め、73人体制で稼働。充実した体制を整えている。

◇高い技術で迅速に治療
救命救急センター長の葉季久雄(ようきくお)医師は、「初期治療を受けることで助かる命があります。救急車を呼んだのに病院にたどり着けず、適切な治療が受けられないなんて、医師としてあってほしくない」と力を込める。特に危険なのは致死性不整脈。心臓がけいれんし血液を送り出せない状態になる。事故などで心肺停止状態になった患者も危険だ。どちらも1分の遅れが命の危険につながる。
救急隊が搬送してくる患者を少しでも早く医師の管理下に置けるよう、受け入れる病院側でも体制を整えている。「真っ先に必要なのはトリアージ(重症度や治療緊急度に応じ傷病者を振り分けること)。訓練を受けた看護師が、意識レベルや呼吸数といった指標を基に振り分けます」と葉医師。トリアージに基づきスピーディーに処置室が決められ、医師が治療にあたる。
初期治療までの時間短縮につながるもう一つのカギは、看護師の技術向上だ。特に心筋梗塞や腹腔(ふくくう)内出血などでは、緊急の治療が必要となる。治療には心臓カテーテルや内視鏡、血管造影といった技術の必要な検査をするが、多くの病院では専門部署の看護師を院外から呼んでくるため、時間のロスが生まれる。「当センターでは多くの看護師が検査の技術を持っているため、時間のロスがなく素早く検査ができます」と、葉医師は胸を張る。

◇救急隊の滞在時間を削減
令和5年1月は新型コロナの救急患者が急増した。「看護科に無理を言い、最大限まで新型コロナに対応できるベッド数を増やしてもなお、満床状態でした」と語る山田健一朗病院長。「救急隊が搬送してくる患者をまず当院で診療し、県にも協力してもらいながら転院先を探しても、数時間以上見つからない。本当に医療機関も救急隊もギリギリの状況でした」と、振り返る。
搬送先の病院が見つからなければ、救急隊は立ち行かなくなる。令和4年12月29日に東京都昭島市で実際に起きた救急車の横転事故では、救急隊の連続出場時間が17時間を超えていたという。
「病院が受け入れを拒否すると、救急隊は次の病院を探さなくてはいけません。現場滞在時間が伸びれば治療の開始が遅れ、最悪、患者の命の危険にもつながります」と葉医師は案じる。救急隊の搬送にも病院での受け入れにも限界はある。このまま救急搬送の件数が増え続けると、いつかは対応できなくなる恐れもある。「病院は救急隊のことを知り、消防は病院のことを知り、お互いに負担をかけないようにどうすればいいのか、意見を出し合いコミュニケーションをとっています。危機的な状況も共に乗り越えてきました。必要な人に医療を届け命をつなげるため、これからも協力を深めていきます」。

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