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【特集】永井路子さんをしのんで 2

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茨城県古河市

■追悼に寄せて
『ハートカクテル』などで知られる漫画家・イラストレーターのわたせせいぞうさん。古河市出身の奥様とのつながりで永井さんとは親交があり、また、漫画家を志すきっかけをつくってくれた恩師でもあるそうです。
本号発行に際し、わたせさんから追悼のコメントをいただきました。

永井路子さんが亡くなられたというニュースが流れた。
ショックだった。
ボクが漫画家になったのも、永井路子さんのひと言。
「渡瀬さんは漫画家になりたいんだ」
また二足のわらじで悩んでいた頃は、「漫画家の世界は大変だから、サラリーマンを続けて、漫画は趣味になさい」と中々漫画家になることは許してくれなかった。
「どうしても漫画家一本でやりたければ、漫画の収入が今のお勤めのサラリーの6倍になることが目安ですよ」と常々仰っておられた。
先生が鎌倉にお住まいの頃、鎌倉山のお宅にお邪魔して、「二足は辛いのでもうそろそろ」なんてジクジク言っていると、「6倍になったの?」と牽制(けんせい)された。
それから8年、ボクは40歳の時の会社の異動を機に退職。
先生には事後報告になった。
「先生、二足のわらじ、卒業しました。全然6倍には程遠いのですが…」と言うと。
先生は「そう、おめでとう!」と祝って下さった。
永井先生はボクの絶対的理解者だった。
その後先生は東京に、一時期先生のお宅とボクの仕事場が5分圏内に。
時々先生の散歩に遭遇することも。嬉しかった。先生は颯爽(さっそう)と若々しく歩いておられた。
ボクが車で遭遇した時、「先生! お送りしましょうか?」と言うと、「歩きなさい、あなた歩くのよ」
永井路子先生、御冥福をお祈り申し上げます。

[PROFILE]
1945年神戸市生まれ。早稲田大学卒業後、サラリーマン生活を送りながら漫画の制作を始める。1974年『ビッグコミック』の第13回コミック賞入選。著書に『ハートカクテル』『ハナドキロード』『菜』など多数

■お別れの会
日時:11月5日(日) 14時(関係者のみ)
※15時30分~19時まで、一般向けの献花を行います。平服でご参加ください。
場所:古河文学館

問合せ:古河文学館
【電話】21-1129

■古河文学館 特別展
「追悼 永井路子~透徹なる歴史への眼差し~」
期間:10月28日(土)~12月24日(日)
時間:9時~17時(入館は16時30分まで)
費用:200円(小中高生50円)

○ギャラリートーク
特別展について、担当学芸員が永井先生との思い出話やイチ推し資料を紹介・解説します。
日時:11月11日(土) (1)11時、(2)14時
定員:各15人
申込:10月14日(土)9時~〔TEL〕

問合せ:古河文学館
【電話】21-1129

■古河文学館長のオススメ
文学館の開館当初から学芸員として永井さんと接してきた秋澤館長に、オススメの6冊を紹介していただきました。この機会に、ぜひ、永井作品を手に取ってみてください。

(秋澤正之 館長)
永井先生は「歴史とは、人間とは、そして歴史小説とは何か」を追いつづけ、それこそ日本全史にわたり、数多くの傑作を世に送り出してきました。丹念な史料検討に基づく独自の歴史解釈で描かれた作品は、文壇のみならず歴史学界からも高く評価されています。また、女性史研究の成果をいち早く取り入れ、歴史における女性の役割に光を当てて新たなヒロイン像を世に問うてきたことも永井文学の大きな特徴と言えます。
数多くの名作から6冊しか選べないのはまさに苦行でしたが、ここでは文学賞受賞作やベストセラーといった一般的な基準だけでなく、永井文学のもう一つの特徴、叙述形式の多様さにも留意しつつ、ちょっと変わったオススメリストを作ってみました。

○炎環(えんかん)
なんと言っても外せないのが本作。阿野全成(あのぜんじょう)、梶原景時、阿波局(あわのつぼね)、北条義時を主人公とした4つの短編を連作形式にして鎌倉幕府成立の深部を描いた直木賞受賞作。その独自の史料解釈は歴史学者からも高く評価された。

○万葉恋歌(まんようれんか)
学生時代の先生の座右の書であった『万葉集』。その中から愛の歌を取り上げて鑑賞しつつ、万葉人の愛の純粋さ、さらには日本人の心の形、愛の形を考察している。もちろん「まくらがの許我(こが)」の歌にも触れている。

○茜(あかね)さす
歴史小説家・永井路子が描く現代小説。『万葉集』の相聞歌から古代史の愛憎渦巻く人間模様に興味を抱いた女子大生を主人公に、現代と古代を交差させながら、女性の自立や愛のありようといった問題に迫る。

○美女たちの日本史
『永井路子歴史小説全集』の収録作の中から、時代順に女性の登場人物を概説したエッセイ。いわば「永井文学・虎の巻」「日本女性史アラカルト」。やわらかな語り口調で読みやすく、長編との併読がオススメ。

○史脈瑞應(しみゃくずいおう)
次々と直木賞作家を輩出した伝説の同人誌『近代説話』の先輩・寺内大吉との対談集。それぞれの生い立ちから若き文学修業時代、ペンネームの由来なども語られている。先生の古河時代を知るのにうってつけの作品。

○岩倉具視(いわくらともみ)
毎日芸術賞受賞の本作もやはり外すことができない一冊。構想四十余年、岩倉具視と明治維新の真の姿を描ききり「これを抱えつづけることで私は死なずに生きてきた」と先生がおっしゃる、まさに永井文学の集大成。

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