文字サイズ
自治体の皆さまへ

想いを石に刻む~高遠石工の歩いた道~

22/63

長野県伊那市

■Vol29「市内の貞治仏探訪(5)」
現在、伊那市では高遠石工の石仏を地域づくりに生かしていくため、市民と協力して情報発信に努めています。メディアに取り上げてもらうことも多くなり、石仏に親しむ人々の層が着実に広がってきました。
さて、今回は守屋貞治の『石仏菩薩細工』に記載されている建福寺西国三十三所観世音菩薩を取り上げます。これまでにも何体か紹介していますが、まだ紹介していないものとして、手に持っている「持物」というものに特徴がある第五番札所葛井寺本尊の十一面千手観世音菩薩を紹介します。
この観音様は、名前に「十一面」とあるとおり、頭の小さな阿弥陀如来像の周りに11の阿弥陀如来の顔があります。また、「千手」とあるとおりたくさんの腕を持ち、たくさんの持物を持っています。実際の本尊は30以上の持物が表現されていますが、石ではそこまで彫り上げられないので、貞治は何を持っているかが伝わる大きさで種類を厳選して表現しています。見た限りでは、(1)あらゆる生き物を守る錫杖(2)敵を避ける槍(宝戟)(3)目の病気を治す日輪(4)熱病を冷ます月輪(5)あらゆる生き物を救うために現れる阿弥陀如来の仮の姿(化仏)(6)悟りへ導いてくれる円盤型の道具(法輪)(7)あらゆる願いを叶えてくれる玉(宝珠)(8)美声を与えてくれる鈴(宝鐸)(9)慈悲や幸福の象徴である蓮華(10)怨みを断ち切る棒状の道具(独鈷杵)(11)煩悩を断ち切るまさかり(鉞斧)(12)煩悩を消し去り、仏様とつながることができる数珠(13)おなかの病を治す鉢(宝鉢)が表現されているように見えます。
『守屋貞治旅日記』を読むと、岐阜県関市の米香洞という岩窟で地蔵尊を彫り上げた際に「地蔵尊出現」と記しています。心のままに手を動かしていったらお地蔵さまが現れたと考えたようで、貞治が仏様を大変敬っていたことが感じられます。それを示すかのように持物の彫刻も大変繊細に仕上げています。近くでじっくりとご覧いただきたいと思います。

問合せ:高遠町歴史博物館

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU