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特集・新春対談(2)

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長野県高森町

壬生:屋台のようなお店ですか!できることからやってみるところが素晴らしいですね。
岸川:彼らの取り組みは注目され、新聞やニュースで取り上げてもらうなど町に明るい話題が生まれました。そうした中で一層、彼らの技術を発揮できる場所が作れたらと研修施設の建設に向けて動き始めたんです。建築を学ぶ県内の高校生を対象に設計コンペを行い、優勝作品を基本設計に現在の「まごの店」が入る施設を町と県が共同で建設しました。平成17年のことです。
壬生:地域にも大きな経済効果をもたらしたそうですね。
岸川:最初の3年間だけでも、およそ億円の経済効果があったといわれています。ただそれだけではなく、高校生の活躍する姿を見て応援してくれる企業、個人が増えましたし、母校を自慢する卒業生の姿も見られるようになりました。結果的にまちの活性化につながったわけですが、ここで大切なのはこの活動は大人が「まちづくり」を目的に行ったものではなく、高校生が輝くためのステージを作っただけだということ。結果を生んだのはあくまでも若者たちの力です。
壬生:今年8月に開催の「全国高校生SBP交流フェア」にも参加させていただきましたが、全国各地に良い活動がたくさんありますね。
岸川:そうなんです。例えば沖縄県西原町の「NSBP(西原町学生ソーシャルビジネスプロジェクト)」は、サトウキビを使った商品の開発や演劇の企画・上演などを通じて町を元気にしています。中学を卒業し、高校は別々になっても「町を愛する地域のみんなでつながろう」という活動が年間続いていて、大学生や社会人になってもその関わりが継続している形です。ひと昔前の青年団(※2)に似ていますが、違いはビジネスとして自分たちで活動資金を生み出しているところですね。
壬生:どの活動も地域と連携しているところが素晴らしいです。
岸川:若い子が元気で輝いていると大人も応援したくなりますし、自然に地域との関係も深まっていくんですよね。見ていると、裏方を務めている大人たちも同じレベルで輝いている。例えば、現役時代にマーケティングや商品開発をバリバリやっていた方が「自分の経験や学んだことを若い子たちに託していきたい」と手伝ってくれたりする。それってすごく素敵なことですし、そういう方が増えることで結果として町が活性化するのだと感じています。

■地域を知り、学び、行動につなげる「地域人材教育」のこれから
壬生:高森町では小・中学校の総合的な学習の時間を活用し、地域人材教育を行っています。地域を知り、学び、自発的な活動を起こすことが目的で、この活動も5年目を迎えました。
岸川:小学校から一貫して行っているところがいいですね。
壬生:中学3年生の段階で、ある程度の達成感や成功体験を得て、次の「高校」というステップへつなぎ、思いを共有できる人と動き始められる土台を作っていきたいと考えています。ただ、時間も足りない中でその思いが強すぎて、大人が介入しすぎてしまう部分はあるかもしれません。その辺りのバランスが難しいです。
岸川:私たちの場合は何か行動を起こす前に、大人たちが徹底的に議論します。これは大人の責任、あるいはプライドでもありますね。そして「これだったらいいだろう」というものができたら、一旦スクラップ(スタートに戻すことを)するんです。そこから改めて未来の大人たちと一緒に議論していくわけですね。求められればヒントを与えますが、結果的に想定していたものとは違う方向へいく場合もあります。それはそれでいいんです。全国でこのやり方をしてきましたが、皆、すごい能力を発揮しますよ。びっくりします。
壬生:町も全力を尽くしていますし、教育委員会も頑張っています。だからこそ、ここでもう一度原点に戻って、岸川さんたちのように外部の視点から見てくださる方々と関係を深めながらよりよい活動にしていきたいと考えています。
岸川:町の活性化はあくまでも結果です。テストの答えのように短絡的に「まちづくりはこうあるべき」という答えはありません。空き家対策、環境問題、観光など思案することは大切ですが、それらはひとつの手段であって「目的」になってしまってはいけない。未来の大人たちに良いステージを与え続けるのが大人の義務であり、ステージ上で演じて学んでいくのは若者たち。だからこそ、良いステージをたくさん用意してあげる必要があると思います。

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