文字サイズ
自治体の皆さまへ

富士山世界文化遺産 登録10周年記念特集 VOL.3 水×産業(2)

3/22

静岡県御殿場市

■御殿場の水と酒についての座談会
●テーマ1 富士山(御殿場)の水や環境が商品に与える影響について
市長:御殿場や富士山の水や環境が皆さんの商品に与える影響にスポットを当て、自由に意見を述べてください。

キリンディスティラリー(株)
遠藤さん(以下、遠藤):今から50年以上前に蒸溜所の建設地を全国で探した結果、ウイスキーづくりに理想的な環境である御殿場を選んだ経緯があります。ウイスキーづくりは仕込みから発酵、蒸留、長期間熟成という工程があります。仕込みのための水が良質ということはもちろん、加えて、木樽が周辺の空気を取り入れながらウイスキーの味に反映されていくため、その土地や水、環境が製品の品質に大きく影響します。富士山の良質な伏流水が豊富にあることは、当社の事業にとって欠かせない条件です。

御殿場高原ワイン(株)
門倉さん(以下、門倉):ワインの原料であるブドウは湿気を嫌がりますが、市内にある当社の農場は日当たりや風通しが良く、2ヘクタールの土地で15トンほど、ワインにして1万5千本相当が収穫できます。恐らく市内で本格的な西洋品種のワインを作ることは初めての試みだったと思いますが、色々なサポートがあり、販売も含めて継続可能な製品づくりが出来ています。

GKB(株)
庄司さん(以下、庄司):富士山の伏流水を使えることは、対外的に見ても非常にイメージが良く、製品づくりにおいてどこにも負けないと思っています。生産量というよりも、日本一新鮮なビールを、直結しているレストランでたくさんの方に飲んで頂くことに力を注ぎ、更に努力していきたいと思います。

(株)ディーエイチシー
有賀さん(以下、有賀):ビールづくりにはたくさんの水を使います。ビール自体は90パーセント以上が水で構成されています。他の都市部にある工場では、良い水を買わなければならないことを考えると、御殿場はお酒づくりに適した土地だと思います。

(株)根上酒造店
根上さん(以下、根上):昭和47年に現在の場所に醸造所を構え、水に恵まれてきました。以前は駅前にあり、浅い井戸だったと思います。御殿場の土地柄、どこを掘っても、恐らく水が湧くとは思いますが、井戸が深くまで掘れるようになったことにより、更に地下水の恩恵を享受できるようになったと思います。昭和57年頃にはまだ酒造店が4社あり、全ての会社で井戸を持っていたと記憶しています。
お酒の質に1番影響を与えるのが水です。ただ奇麗ということだけではなく、水の成分によって発酵の具合いが違ってきます。それをどうコントロールするかが、作り手の大変なところであり、また、面白いところだと思います。

市長:ありがとうございました。富士山の水や風土、空気、風など、企業ごとに様々な角度から御殿場の利を生かした商品を製造して頂き、ありがたく思います。今回の座談会の目的の1つに、市民に富士山の恵みを生かした地元のお酒を知って頂くことがあります。市民の方々が誇れるものであると同時に、富士山の水で作られた商品として、市としても積極的に全国へ広めていきたいと思っています。
根上さんのお話しについて、私も、昔4軒程酒蔵があったことを覚えています。徐々に減り、当時からある酒蔵は根上さんだけとなってしまいました。地酒は次世代に繋いでいく必要があると思います。そのためにも、市は産業の活性化を進めていきます。

●テーマ2 水を含む富士山の資源面や地域と、企業の関わり方について
市長:水を含む、富士山の資源面や地域と、皆さんとの関わり方についての想いがあれば、率直にお話しください。

庄司:例えば、岩手県はホップでまちおこしを行っています。伊豆の国市でも、新しい農業をやるニューファーマーが60人弱入植しているそうです。御殿場でも、同様の取り組みを通して移住を促進することも非常にいいと思います。富士山に育まれた地元産の原料でお酒の全てを作ることが出来れば、こんなに素晴らしいことはないと思います。根上当社の製品にとって、水だけではなく、米も大切です。食べて美味しい米でも、お酒に適しているとは限りません。県が試行的に栽培している酒米は、御殿場では気候的な問題で栽培が難しいです。今後も、御殿場の風土に合う酒米を探していきます。

有賀:他の自治体のふるさと納税の返礼品で、市役所の壁面を利用して栽培したホップを使用した製品の製造にも取り組んでいます。そのような自治体と連携した取り組みも面白いと思います。

門倉:コロナ禍などを背景に、家飲みが増え、お客さんにお店に来て頂く機会が減りました。今後、市でもお客さんが来店しやすくなる仕組みづくりをしてもらえると、お客さんにとっても喜ばしいことだと思います。街の活性化につながることを、市と一緒に考えていきたいと思います。

遠藤:操業開始以来50年にわたりこの土地で事業を続けられたのは、地域の皆様のご支援のお陰だと思っています。この自然環境を生かし、これからも地元の皆様と共に、地域経済や農業の活性化に貢献できる取り組みが出来ればと考えています。

市長:ありがとうございました。お話を伺い、市も一緒に、一生懸命取り組んでいきたいと感じました。
市では現在、企業誘致に力を入れています。企業の立地の決め手の一つに富士山の水を生かした製品づくりが出来ることがあります。そのような環境面に加え、新東名高速道路の開通などで交通の利便性が向上し、交通の要所の中間地点としても注目されています。製造業は市へ与える影響も非常に大きいので、雇用の面も含めて受け入れ企業を決定していきたいと思います。
また、お客さんが来店しやすくなる仕組みづくりに関連し、道の駅的な役割を持つ大型の集客施設の設置を計画し、現在調査をしています。道の駅のワンコーナーで御殿場のお酒が手軽に買えれば、地域の人たちも喜ぶと思います。
一方、地域との関わりという意味では、企業が地域に果たす役割も大切です。年に1、2回でも、富士山の水とお酒に関したお祭りを開催するのも良いと思います。市全体として取り組むイベントであれば、交通手段も用意できると思います。
お酒づくりに関しては、地元の魅力を市内外にPRするという点も踏まえ、市も応援していく必要があると思います。企業と市が連携をすることが大切ですので、これからも皆さんと相談しながら様々な取り組みを行っていきたいと思います。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU