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〈特集〉栗林公園 特別名勝指定70周年 一歩一景に込められた思いを訪ねて(1)

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香川県

栗林公園が1953年3月に国の特別名勝に指定されて70年を迎えました。室町時代の小さな庭園から始まり歴代の藩主たちが磨き上げ、紫雲山を背景に見事な世界観を表現する大名庭園の絶景は、「お庭の国宝」ともたたえられます。1875年から一般公開され、県内外のみならず海外からも訪れる多くの人に親しまれてきました。
一歩足を進めるたびに景色が変わる「一歩一景」の美しさは、それを守り伝え続ける人たちが支えてきました。いつもと少し違う視点で、栗林公園を再探訪してみましょう。

■若手庭師を中心に16人で全樹木を管理
園の美しい風景を日々守るのは、同園観光事務所造園課の仕事。樹木管理を担当する「北庭班・南庭班」、除草や清掃を行う「管理班」、土壌環境改善・病害虫対策などを行う「専門班」、設備の修理などを行う「営繕班」の5部門30人体制です。
北庭班・南庭班には、造園の実務経験があり国家資格を持つ庭師が所属。園内約1400本の松のうち職人が管理する「手入れ松」約1000本をはじめ、全ての樹木を16人で維持するため、毎年手を入れるものから数年に一度整えるものまで、管理のペースもさまざまです。「確かな技術をベースに、手間と時間をかけて芸術性を追求する仕事です」と、造園課長の宮﨑智嗣(みやざきともつぐ)さん。「園には国内外から多くの人が来られ、中には庭園に造詣が深い人も少なくありません。プロ目線で見ても美しく、また来たいと思ってもらえる管理をしたい」と力を込めます。
以前は職人技を磨いたベテランたちが中核を担っていましたが、10年ほど前から30代を中心とするフレッシュな体制になりました。2007年ごろから園内全ての松に番号を振って一本一本の管理担当者を決め、作業記録や気になる点を樹木カルテに残し、班内で情報を共有して技術の継承を図っています。職人同士のコミュニケーションが密になったことで、管理に統一感も生まれました。
同課総括(そうかつ)の森川茂仁(もりかわしげひと)さんは、北庭班・南庭班等の全体を統括するとともに、21年から鶴亀松(つるかめまつ)・夫婦松(めおとまつ)・揺島(ようとう)のなげしの松(まつ)といった園内屈指の名木の手入れも任されています。中でも、鶴亀松は園の代表格。「高さや枝の張りなど、既に完成されている今の形をいかに守るかが大事。芽吹き方、枝の方向、気候による生育の変化などに細かく気を配ります。私よりはるかに年長の樹ですから、管理させてもらっているんだと感謝して向き合っています」。森川さんは、一本一本の個性を引き出す手入れと、奥行きのある景観表現を日々、追求しています。
来園者の喜ぶ声を励みに、声を掛けられれば鑑賞のポイントなどを伝えることもあるという森川さん。「幹肌や根張りの美しさ、不等辺三角形の安定感などを重視するところは盆栽と共通しています。香川は『日本一の黒松盆栽の郷』であり、最初期の松の整形には盆栽の技術も使われたかもしれません。とはいえ、感性は人それぞれ。まずは皆さんが素直に感じたことを大切にしてほしいですね」と語ります。

■園内全てが見どころ訪れるたびに新たな発見
天下の名園の絶景一つ一つに歴史があり、それを丁寧にひも解いてくれるのが「栗林公園ボランティアガイドクラブ」の皆さんです。2005年に発足し、70代を中心に最高年齢89歳の方を含む120人が在籍しています。前会長の庵下孝(あんしたたかし)さんは「建物や松、花、お茶など、ガイドによって得意分野はさまざまですが、『栗林公園が好きでたまらない』という気持ちは共通しています」と笑顔で話してくれました。
園内を案内するには豊富な知識が必要です。基本のテキストはありますが、各自で本を読んだり、講演会に参加して日々研さんに努め、勉強して得た新たな情報を定期的に開催している研修会で共有しています。「公園のことはもちろん、当時の歴史的背景や文化、他県の情報など、常にアンテナを張っています。独学や研修会などで得た情報を事前に整理し、お客さまの反応を見ながら案内しています」と庵下さん。ガイドを通じて親しくなった山形県のお客さまは、今でも秋に新米を送ってくれるそうで、人とのつながりもやりがいになっています。
「これだけ広い庭園は見たことがない」「松の美しさは他の庭園を超えている」と来園者の多くが口にするそうで、外国人観光客からは「この広さの庭園の入園料がこんなにリーズナブルなのは珍しい」との声も。庵下さんは、「栗林公園はどこを切り取っても絵になり、全てが見どころ。毎回新しい発見があります。日本一小さい県に、日本一広くて素晴らしい庭園があることを誇りにしてもらいたい」と願っています。

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