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【特集】牛肉を食べる。(2)

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鹿児島県霧島市

~和牛に携わる人の思い~

[INTERVIEW]
【肥育農家】
■愛情かけて大きく育てる
隼人町在住 中村 優志(まさし)さん(45)
実家が肥育農家だったものの、最初は後を継ぐ気はありませんでした。事故をしてリハビリのために実家に戻り、手伝っているうちに本業に。8年前に独立して、今は肥育牛100頭、繁殖牛20頭を飼っています。
生後9カ月前後の子牛を市場で買って来て、900kgぐらいの牛になるまで約20カ月かけて育てます。
朝6時ごろから餌をやり、牛たちの体調を見て回ります。いつもと違った行動をしていないか、病気やトラブルにいち早く気付けるよう、行動などを把握する機器も付けています。
生き物なので病気になることや、時には死んでしまうことも。無事に出荷できたときは、この時を迎えられて本当に良かったと、毎回思います。
完全に休みといえる日はあまりないですが、農場には毎日来ているので、来ないと落ち着きませんね。なんだかんだ言って、牛がかわいいから続けているんだと思います。

【繁殖農家】
■牛を飼い、地域を守る
福山町在住 東村 一彦さん(61)
もともと会社員でしたが、けがを機に就農。実家は兼業農家で牛を5頭ほど飼っていましたが、後を継ぐのではなく、自分の牛を飼いたいという思いがありました。牛を飼うには牛舎・機械などの初期投資が必要なため、最初は園芸で資金を貯め、自分の牛を飼い始めてから30年近くたちます。今は妻と息子、従業員の5人で、母牛300頭を飼っています。
繁殖農家は、母牛が1年1産するように管理するのが一般的です。生後13カ月頃に初めて授精させ、一生で10頭ほど産ませます。うちでは毎月25頭近くが出産しますが、生まれた子牛が虚弱で死亡したり、なかなか受胎しない母牛もいたりします。繁殖農家は子牛を産ませて、市場に出せてこそ。とにかく牛の体調管理が大切です。
粗飼料を作るために田畑を借りて耕作を行っており、農地が荒れるのを防ぐことにつながっていると思っています。牛を飼うことが地域を守ることにつながると思うのです。

◇毎月ある子牛競り市では牛肉などを販売しています
・11月の販売日時…10日(金)・11日(土)午前7時45分から競り市終了まで
・場所…姶良中央家畜市場(隼人町西光寺496)

問合せ:JAあいら畜産部
【電話】42-6570

◎中とじに、市内で焼肉が食べられるお店のクーポンがありますので、ぜひご利用ください。

■私たちの食卓に届く牛肉。「おいしい」が届けられるまでに、どんな思いが込められているのでしょうか。

JAあいら 畜産担当
東條 史典さん(46)
鹿児島市在住。県経済連で流通販売を担当し、今年からJAあいらに勤務。

食料品や日用品など、身の回りのさまざまなものが値上がりしている昨今。物価高騰や新型コロナウイルスの影響で、牛肉の需要が低迷しています。餌代や燃料費などの高騰により、子牛を買って育てる肥育農家の採算がとれないことから、子牛の価格は下落。子牛を産ませて市場に出す繁殖農家も苦境に立たされています。

▽身近にある日本一
「そもそも牛は、鶏や豚に比べて出荷できるようになるまでの期間が長い。生まれてから約3年かけて育てるので、餌や管理のコストもその分かかる。だから牛肉の値段は割高になります。普段の食事にというより、特別な日には牛肉を、とお勧めしたいですね」と話すのは、JAあいらで畜産を担当する東條史典さん(46)です。
東條さんは昨年の全共で県の実行委員と県代表牛の選定責任者として携わり、鹿児島黒牛が9部門中6部門で1位を獲得した、実質日本一の立役者の1人。鹿児島県は黒毛和牛の生産頭数でも日本一を誇り、質と量の両方を兼ね備えた、畜産王国と言っても過言ではありません。しかし、牛肉の消費量は全国第39位(総務省統計局「家計調査」令和2~4年平均)。「日本一になったことで鹿児島黒牛の知名度は上がったものの、他のブランド牛に比べれば消費者の認知はまだまだ。生産量が多く、安定的に供給できることが最大の強みである鹿児島の黒牛。日本一の産地としてもっと身近に感じてもらいたい」と力を込めます。

▽和牛≠国産牛
牛肉を買うとき、どんな表示を目にしますか。和牛とは、一般的に黒毛和牛として知られる黒毛和種、褐あか毛げ和種、無角和種、日本短角種の4品種をいいます。これらは日本在来種の牛を食肉専用に改良を重ねた品種です。
「スーパーなどで見かける国産牛という表示は、たいてい和牛ではありません。日本で肥育されたホルスタイン種や交雑種などが、国産牛として売られています。自分が食べている牛肉がどういったものなのか、消費者には本来の価値を分かった上で選んでもらいたい。その上で、和牛の持つ独特の味や香りなど、日本一の和牛・鹿児島黒牛のおいしさを味わってもらえたら」

【育てられた牛が食卓に届くまで】
●繁殖農家⇒肥育農家
▽飼育〜出荷
離乳した牛は生後約10カ月・約300kgになる頃まで、繁殖農家で草や栄養バランスの考えられた配合飼料を食べて体をつくり、胃を丈夫にします。その後、肥育農家で大麦を含んだ濃厚飼料や稲わらを食べて筋肉をつくるとともに、筋肉の間に霜降り状の脂肪を付けていきます。

⇒食肉センター
▽獣医師免許を持つ「と畜検査員」による3段階の検査
・生体検査
牛をと畜する前に健康状態を確認します。病気にかかっていた場合はと畜を禁止します。
・解体前検査
と畜した牛に対して触診や血液検査を行い、異常が見つかった場合は解体を禁止します。
・解体後検査
解体後に頭部、内臓、枝肉などを検査し、食用に適さないものは廃棄します。

▽と畜・解体、大分割、小割
・整形農家から運ばれた牛(生体)は、と畜・解体して枝肉を剥がし、熟成後、四つの大きな部位に大分割します。大分割後は、余分な脂肪の除去と除骨をして細かな部位に切り分け、真空包装して段ボール箱などに詰めます。

⇒流通
▽冷却・配送
加工した牛肉は冷蔵の場合0~4℃、冷凍の場合-18℃以下を目安に保存し、鮮度を保ってお店に届けます。

⇒精肉・販売
▽処理加工・販売事業者
各都道府県知事の営業許可を受けた事業者が、保健所などの指導の下、清潔で衛生的に精肉を取り扱います。

⇒家庭へ

※全国食肉事業協同組合連合会「お肉が食卓にとどくまで・牛肉編」を基に作成。

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