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【特集】8・1の記録と記憶「あの夏の教訓を忘れないために」(2)

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鹿児島県霧島市

■情報を把握し、災害に備える
平成5年と比較して、気象状況や観測・予測技術は変化しています。当時や近年の状況について、気象のプロに話を聞きました。

MBC南日本放送報道局
ウェザーセンター長 住吉 大輔さん(54)
鹿児島市出身。8・6水害の経験から気象現象を的確に、適切に伝えたいと猛勉強し、平成7年に気象予報士資格を取得。県内の天気予報をテレビやラジオでお知らせしている。防災士資格所持者。

気象庁などから出される情報を読み解き、気象に関する知識がない人でも分かりやすい言葉で伝える役目を担う気象予報士。今ではテレビ局やラジオ局にいるのが当たり前ですが、資格ができたのは平成6年になってからのことで、当時は報道に気象のプロがいませんでした。近年のニュースのような解説は乏しく、危機感が伝わりにくかったといえます。

◇情報の質と量が変化
「例えば、総雨量700ミリを越える大雨。この言葉が持つ意味を的確に伝えたい」と話すのは、気象予報士でMBC南日本放送報道局ウェザーセンター長を務める、住吉大輔さん(54)です。「新しい情報が出たらどこがどう変わったか、危険度がどのくらい高まっているのかを分かりやすく伝える。それが私たち気象予報士の役割です」と熱が入ります。
住吉さんは平成3年、同社に就職。ラジオ制作の部署で迎えた3年目の夏、自身も平成5年8月豪雨を経験します。「放送局も1.5メートルほど水に浸かりました。あの年はとにかく雨続きで、大雨の注意を促す情報を何度も発信しています。そのため情報を受け取る側には『いつものこと』という慣れがあったかもしれません」と振り返る住吉さん。7月31日から8月3日までの間に大雨洪水警報は5回、九州南部地方の大雨に関する情報は61回発表されました。
「今ではタブレットやスマートフォン、テレビ、データ放送など、情報を得る手段がたくさんあり、情報を探すことも容易になりました。より細かな情報が出されるようになっただけでなく、昨年からは線状降水帯の予報も始まり、情報量は30年前とは雲泥の差です。だからこそ災害情報などは特に、自分にとって最も身近な媒体で、確実な情報を得ることが大切です」

◇災害発生の危険性が変化
近年、異常気象や数十年に一度の大雨といった言葉をよく耳にすると感じる人は多いのではないでしょうか。その主な原因として考えられているのが、地球温暖化です。住吉さんは「温暖化によって気温が高くなることで気化する水が増え、大気中の水蒸気量が増加。その分、降水量も増えると予測されています。近年では、大雨や高気温、山火事など、毎月のように極端な気象に関連する情報が届きます。災害発生の危険性は高まっていると考えた方が良い」と警鐘を鳴らします。
47年前からアメダスの観測地点である溝辺。平成5年の年間降水量5098ミリ、同年8月1日の日降水量450ミリは今でも、観測史上1位として記録されています。住吉さんは「一方で、この時1位を記録した時間雨量77ミリは、現在は5位にまで下がりました。上位3件は、いずれも平成20年以降のものです。局地的な大雨になる集中豪雨が増えていると言えるのではないでしょうか」と近年の気象状況の変化を示唆します。

◇避難が必要か、今一度確認を
現在、大雨や土砂災害などの防災気象情報は5段階の警戒レベルに対応する形で発信されています。市では、災害情報などの通知が届くスマートフォンアプリ「きりしま防災・行政ナビ」で、ハザードマップを公開しています。住吉さんは「いつでもハザードマップを確認できるのは利点。自宅が安全な人は、そこに留まることも避難です。自宅周辺の、災害の種類に応じた危険度を把握し、避難が必要な人は行動に移すスイッチを決めておいてほしい」と力を込めます。
「自分には心配してくれる人もいないし、避難する必要はないと話す人がいますが、少なくとも地域の人が心配しています。被害に遭ったとき、救助に向かった人が二次災害に遭うことも考えられます。危険な場所に住んでいるのであれば、早めの避難が何より大切です。『今まであの山は崩れたことがないから』は、『今度も大丈夫』の根拠にはならないことを、覚えておいてほしい」

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平成5年に起こった豪雨災害の記録と記憶、近年の気象状況などを紹介した今回の特集。観測・予測技術が向上し、大雨予報の精度は大幅に上がりましたが、その情報を生かせるかどうかは自分次第です。
あの夏のような大雨が、またいつ起こるかは分かりません。二度とあのような悲しい被害を繰り返さないよう、日頃から気象や災害の情報を気にかけ、自分事として災害に備えましょう。

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