■十二代沈壽官(ちんじゅかん) 『錦手にしきで)人形置物』
□海外で人気を博した白薩摩
薩摩焼の一つである白薩摩は、かつての藩の御用品です。なかでも錦手は、金泥や鮮やかな色絵具で絵付けされた陶器で、藩主のみが取り扱えた貴重品でした。明治に入り海外で人気を博すると、民営の窯で焼かれて盛んに輸出されるようになりました。
この作品は、捻(ひね)り物(もの)と呼ばれる置物細工です。片膝を立てて座る男性のもの思いにふける表情や、衣服の質感、指先やひもの細部まで精巧に表現されています。江戸時代までは観音などの聖人像が主流でしたが、明治半ばからは、日常の一場面や動植物を表したユニークなものが登場し、本作もそうした潮流の中で生まれました。
作者は幕末から明治を生きた、十二代沈壽官。浮き彫りや錦手を得意とし、白薩摩の透かし彫りの技術を開発しました。明治6年のウィーン万博では、出品作品が賞賛されるなど、国外でも高い評価を確立し、海外販路の拡大に大きく貢献しました。
問合せ:市立美術館
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