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早生樹による後世につなぐ森林づくり

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兵庫県佐用町

町域の約8割を占める森林。町では、令和4年度から管理が困難な森林を引き取る「町有林化促進事業」など、豊かな森づくりに向けて取り組んでいます。令和5年度からは、短期間に生育することで、効率的かつ効果的な林業サイクルを生み出すことが期待できる「短伐期施業(たんばつきせぎょう)」の調査・研究に着手しています。

◆佐用町の森林は健全なのか
町域の約8割を占める森林のうち、約半分はスギやヒノキなどの人工林です。令和元年に実施した森林所有者へのアンケートでは、約8割の人が自身が所有している森林の管理ができていないことがわかりました。
放置された森林は、木と木の間隔が狭くなり、日光が地表に届かず、下草が生えません。その結果、雨が降っても水が地面に染み込まず、土砂と一緒に流れ出します。また、木の幹は太らず、根を深く張ることができないため、倒れやすくなります。そして、倒れた木の根元に雨が流れ込み、地表ごと土砂の崩壊が発生し、いわゆる災害に弱い、悪循環な山になってしまいます。

◆林業の低迷
荒廃した山を改善するためには、すべての木を切り、新たに植えるという森林の再生が効果的と言われています。
しかし、スギやヒノキなどは植樹から伐採まで50年以上かかるため、長期的な事業に投資しようとする森林所有者はほとんどいません。また、木材価格の長期的な低迷と、人件費をはじめとする造林費用の高騰で、林業として採算を取ることも難しくなっています。

◆産官学共同の実証実験
これらの課題を解決するために、町では、生育が早く、投資に対する回収期間が短いことから、林業の担い手育成や雇用の創出が期待できる「早生樹」による短伐期施業に取り組もうとしています。
こうした中、旧利神小学校の跡地活用をきっかけに、短伐期施業に協力してもらえる事業者として(株)ジャパンインベストメントアドバイザーに参画してもらうこととなりました。
同社は、令和3年から東京農工大学と「カーボンニュートラルと林業再生」の実現をめざした共同研究を行っており、すでに全国各地で実証実験に取り組んでいます。昨年には、愛媛県や島根県など、全国8カ所で早生樹の試験植栽が実施され、町内でも試験が行われることとなりました。そのため、町の取り組みに対しても東京農工大学のサポートを受けることが可能となり、令和5年度から、事業化を目的に産官学の共同事業として調査・研究を進めています。

◆地球温暖化対策として
環境面では、地球規模で温暖化が大きな問題となっていますが、その温室効果ガスの吸収源として、森林資源は大きな役割を担っています。現状の森林でも、一定の温室効果ガスの吸収は行われていますが、老朽・高齢化した樹木の吸収量は低下していきます。新たに木を植えることにより、若い木が成長する過程で炭素を蓄えれば、さらに吸収量は増加し、効果は増大します。この取り組みは、地方の小さな自治体だけで実施しても効果はわずかです。
町では、国全体で取り組んでもらえるように林野庁に働きかけるとともに、国に先駆けて取り組みを進めていきます。

◆現在は実験段階
昨年度は、町の気候や土壌にどのような早生樹が適しているのかを判断するために、植樹実験を行いました。選んだのは、紙の原料であるパルプやアロマセラピーなどの美容品の原料としての需要が高く、世界で多く植栽されている「ユーカリ」です。ユーカリは、10年前後で樹高が20メートルに成長する早生樹で、品種が数百種類あることから、環境に合わせた品種を植えることができます。
町では、昨年6月に、佐用クリーンセンター周辺の山林0・1ヘクタールの範囲に、数種類の苗木を植えました。しかし、獣害や乾燥の被害が確認され、さらに実験を重ねる必要があります。今年度も品種や植栽時期を変えながら、町の環境に合った樹種を探すために、産官学で協力して研究を進めていく予定です。

●早生樹ユーカリの特徴
・植樹から10年前後で約20メートルに達するほど成長が早い
(樹径は15~20cmになる)
・比重がスギより大きいため、二酸化炭素の吸収量が多い
・伐採後の根株から新たな樹木が成長する
・スギやヒノキと同様にまっすぐ伸びる
・数百種類もの品種があるため、土地に合った品種を選定できる
・獣害に強い
・花粉が大気中に飛散しない
・しっかりと根を張るため、土砂崩れの防止を促進する

●説明会を開催しました
3月8日(金)にさよう文化情報センターで、町の森林整備の取り組みを紹介する説明会を開催しました。
説明会では、庵逧町長からこれまでの経緯の説明や、東京農工大学の教授から短伐期施業の詳しい紹介があり、その後は、参加者からの質問に応えました。
今後も、植樹場所を選定する場合など、必要に応じて説明会や広報紙でお知らせします。

問い合わせ:農林振興課
【電話】82-0667

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