認知症とどう向き合うべきかを考えることは、現代の高齢化社会においてとても重要です。皆さんは認知症について前時代的な考えにとらわれない「新しい認知症観」という考えをご存じですか。今回の特集では、認知症の基礎知識のほか、新しい認知症観とはどのようなものなのか、認知症ご本人の方などが活躍する「チームオレンジ」に焦点を当てつつ、紹介していきます。
■認知症の基礎topics
▼認知症とは
認知症とは、神経細胞の働きが悪くなり、認知機能(記憶力や判断力、思考力など)が低下することで日常や社会生活に支障を来す状態をいいます。人口当たりの認知症の方の割合は年々増加傾向にあります。
▼代表的なのはアルツハイマー型認知症
認知症の症状や進み方は、種類により異なります。その中でも一番の割合を占めるのが、アミロイドβやタウタンパクというたんぱく質が脳に異常にたまることで引き起こされる「アルツハイマー型認知症」と呼ばれるものです。主な症状として、記憶障害(物忘れ)が代表的ですが、場合によっては失語(聞こえてはいるが話が理解できない、物の名前が分からない)や、失認(視力は問題ないが、見えた情報を形として把握し難い)、失行(手足の動きは問題ないが、これまでできていた動作を行えない)などが起きることもあります。
▼加齢?認知症?
加齢により、人は思い出すのが遅くなったり、新しいことを覚えるのが苦手になったりします。認知症は、「加齢による物忘れ」とは異なるため注意が必要です。何かいつもと違うなと感じたときはすぐに掛かりつけ医などに相談しましょう。
○加齢による物忘れ
・体験したことの一部を忘れる(食事したメニューが思い出せない)
・ヒントを与えられると思い出せる
・時間・場所などの見当がつく
・日常生活に支障はない
・物忘れしていることの自覚がある
○認知症による物忘れ
・体験したことの全体を忘れる(食事したこと自体を忘れる)
・ヒントを与えられても思い出せない
・時間・場所などの見当がつかない
・日常生活に支障がある
・物忘れしていることの自覚がない
■地域包括支援センターの皆さんにインタビュー!
知ってほしい新しい認知症観
▼地域包括支援センターって?
地域包括支援センターは、地域に住む高齢者の介護をはじめ、暮らしに関する問題についての相談を受け付けています。相談に応じて必要なサービスや制度を紹介するとともに、利用に結び付けるまでの役割を担います。
▼認知症の偏見(バリア)が解消され、本人がよりよく暮らせるように
現代は超高齢化社会で、認知症がありふれた時代です。2025年には65歳以上の5人に1人が発症するとも言われています。地域包括支援センターでは、認知症が発症しても安心して暮らせる地域づくりを目指しています。
▼たとえ、認知症になったとしても
前向きに、希望を持って生きることが、認知機能低下に対する何よりの特効薬だと思います。地域包括支援センターでは、チームオレンジ(P4紹介)の4活動をはじめ、認知症の方が生きがいを感じたり、心のうちを明かせたりできるような環境を作っています。何か不安なことがありましたら、ご本人や家族のみで抱え込まずに、お気軽にご相談ください
▼「新しい認知症観」という考え方
昨年6月「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が施行されました。これは、認知症の人が尊厳を保持しつつ、希望を持って暮らすことができるよう、また、認知症の方を含む国民一人ひとりがその個性と能力を十分に発揮し、相互を尊重しつつ支え合いながら共生し、活力ある社会の実現を推進するために定められました。
最近では新しい認知症観という考えが注目されています。以前までは認知症は「発症したら、人生がおしまい」「何もできなくなる」「周りにたくさんの迷惑をかけてしまう」と暗い印象が先行しがちでしたが、これからは「認知症になっても大丈夫」「発症しても、できることはたくさんある」「認知症の人も、そうでない人も、ともに生きていく」と考えを転換していくことが大切です。
※参考:認知症介護研究・研修東京センター「認知症とともに希望をもって暮らす地域共生に向けた地域支援体制を築いていくために」をもとに作成
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