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ふるさとの文化財探訪 第114回

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大分県九重町

『みちしるべ』

文化財調査委員 坂本 美樹

『皇太子殿下 御降誕記念 指道標 右はんだすじゆたけた 左とちぎくりばる』と書かれている細長い道標。「田んぼの中からでてきたのですが…」と言われ、よく見かける道標くらいと思っていましたが、子どもの背丈より大きなものなので正直驚きました。表以外は彫り込んだ様子はなく自然石のままです。でも道違うじゃん!と思ったのは土地勘のない私の発想。現在の道より川側下段ですが、昔『オオカン』と呼ばれた道があったそうです。オオカン?日田に続く往還しか知らない私はまたまた大混乱。すると地区内のあちらこちらで『オオカン』『ダイオオカン』との名前が出てきました。発音は違いますが、昔の主な道(町道等)をそう呼んでいるようです。二股の山の神に向かう方が飯田の行く道なので標識と合致します。町道との話でしたので、役場に行って確認したところ ここは里道だそうです。車どころか人や馬でないと通れない狭い道。今はひんやりとした暗い山道。でもその昔、筋湯に湯治に向かう人の往来。その背負っている重い荷物運びますよと小遣い稼ぎをしている人。地域の方々にお話を聞くにつれてそんな想像に掻き立てられます。不思議なのはこんなに大きな道標なのに誰も見たことがないと口をそろえることです。皇太子の誕生記念なので自ずと限られてはきます。別のところにも石碑があると聞き行ってみるとこれまた大きな自然石。大正十三年一月二十六日と彫られてます。倒れていて反対側すべては読めませんが、わずかな隙間から『皇太子殿下』『奉』『祝』との字がわかりました。この道標も同じ頃だとすれば、この皇太子というのは昭和天皇のことなのかもしれません。大きくてひっくり返すことができないのが残念(涙)。この地区には手のいい石工さんもいたそうで、近くにある稲荷さんに石灯籠や『関之本神社』と彫られた石碑がありその方の手によるものだそうです。もしかしたらこれらもその方の作かもしれません。歩いてみて思ったのは、曲がりくねった現在の道よりショートカットされた道で、歩いていくなら断然こちらの道。まだ同じような石碑もある可能性もあるので、この先芝やかたに抜ける道も確認すべく歩いてみましたが、ここだと思ったところは別の林道で、本来の道と思われる道は、藪がひどくて断念。冬の草の枯れた時期にもう一度チャレンジしようと思っています。

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