■美術館の椅子
佐川美術館
学芸員:上村友理(うえむらゆり)
美術館と聞いて、イメージする展示品は何でしょうか。
美術館は館の収集方針などに沿って、古今東西のさまざまな芸術作品が収蔵されています。その中には、絵画や彫刻作品はもとより、椅子などの家具も含まれています。有名な作品では、美術の教科書に掲載されたことのある倉俣史朗(くらまたしろう)作「ミス・ブランチ」、柳宗理(やなぎそうり)作「バタフライスツール」、ハンス・J・ウェグナー作「Yチェア」などです。この他にも名作と評される椅子は数多あり、「椅子の美術館」の異名をとる埼玉県立近代美術館のように椅子をコレクションしている美術館もあります。
本来は調度品として日常使いされる椅子ですが、家具としての機能性とデザイン性が追求されるにつれ、次第に独自の美しさを有する芸術作品としても扱われるようになりました。他の芸術作品とは違い、鑑賞するだけではなく実際に座れる体験展示が行えるのも、家具としての側面を持つ椅子ならではといえます。
佐川美術館では、展示室内やカフェで、デンマークが誇る家具デザインの巨匠・ウェグナーの椅子に実際に座ることができます。何気なく座っていた椅子が実は名作というのは、うれしい驚きにつながることでしょう。気負いなく名作に触れ、触覚から感性を養うのも芸術鑑賞の方法の一つです。美術館を訪れる際には、館内にさりげなく置かれた椅子にもぜひ注目してみてください。
※開館情報は、佐川美術館ホームページでご確認いただくか、電話〔【電話】585-7800〕でお問い合わせください。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>