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合同特集 多文化共生の現在地

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熊本県山都町

昨年6月末の時点で日本に在留する外国人は過去最多320万人。熊本でも2万人を超え、10年前と比べて2倍以上に増加しています。
今回は、県内で進む地域に暮らす外国人住民との交流や、新たな多文化共生の取り組みを紹介します。

■他国の文化に触れる
「はい、きくち〜」。明るい掛け声とともに笑顔で写真に写るのは、菊池市在住の外国人を中心としたコミュニティー「せかいかいぎ」のメンバーたち。この日は菊池女子高校の文化祭に出店し、それぞれの国の郷土料理を販売しました。
特にベトナム料理の揚げ春巻きが好評で、約1時間後には完売。「他国の文化に触れる良い機会だった」と話す来場者もいて、異文化への理解が少しずつ進んでいます。

■誰一人取り残さないために
「菊池市中央図書館では、持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる『誰一人取り残さない』という理念に基づき、多文化共生事業に取り組んでいます」と話すのは、図書館専門委員の小堀久男(こぼりひさお)さん。菊池市内の外国人人口は増え続けており、昨年末は約1200人。その多くは、アジア圏域からの技能実習生です。
同図書館では、雇用側と実習生側の双方から「日本語のコミュニケーションが難しい」という声を聞き、市内在住外国人向けの「日本語教室」を令和2年に開設しました。
その後も地域交流を中心とした「日本語カフェ」や外国人主体でイベントを企画・運営する「せかいかいぎ」を発足し、多文化共生サービスを進めています。
「地元の人からは『国籍に関係なくその人自身と接するようになった』という声も聞きます」と小堀さん。共に考え尊重しながら、多文化共生の輪を広げています。

■増加する外国人労働者
日本に住む外国人は年々増加傾向です。熊本県も例外ではなく、県内の在留外国人は令和5年6月末時点で2万2318人と過去最多を更新。10年前と比べ2倍以上に増えました。
国籍別ではベトナムが最も多く、中国、フィリピンと続きます。外国人労働者が多く、技能実習生の増加や台湾積体電路製造(TSMC)の進出などの影響から今後も増加が見込まれます。

■各地で進む多文化共生
県内では増え続ける外国人と共に多文化共生を進める動きが活発になっています。国際化を進めるため、八代市では令和3年に「やつしろ国際協会」を設立。阿蘇市や合志市でも令和5年に「多文化共生連絡協議会」を発足し、外国人と日本人が豊かに共生できる地域を目指しています。
県が公表した令和5年度の県民アンケートの結果でも多文化共生を前向きにとらえる人が多く、半数を超える52・8パーセントの人が外国人とともに地域で暮らす「多文化共生」を「望ましい」「やや望ましい」と回答しています。
しかし「あまり望ましくない」「望ましくない」と回答した人も8・8パーセントいて、その理由の多くは「治安の悪化」や「文化の違いから起こるトラブルが心配」などといったものでした。
私たち日本人を含め、みんなが地域で安心して暮らせる環境を整えるためには、一丸となって解決に取り組んでいく必要があります。
菊池市立図書館専門委員
小堀久男(こぼりひさお)さん

■INTERVIEW 多文化共生に向けて必要なこと
熊本学園大学 外国語学部
申明直(シンミョンジク)教授
出生率の低下で全国的に外国人労働者の需要が高まる中、県内でも外国人との多文化共生社会を目指す努力が求められています。
多文化共生社会は、法整備などの公共性、そして周囲の人々とのつながりで生まれる親密性で成り立つもの。日本へやって来て、言葉が通じない中で仕事をし、孤独を感じている外国人をケアするためには、その両方を充実させていく必要があります。
しかし、現状は外国人労働者が、まるで透明人間のように認識されてしまっています。外国人労働者は社会のさまざまな場所で仕事を担い、彼らがいなければ私たちは生活できないほどです。
そんな外国人労働者を、社会の一部を担う大事な存在で一人の人間として認識し、心を寄せることから共生は始まります。県民一人一人がそれを意識し実践すればお互いに成長でき、生活をより豊かにできます。

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