21人の高校生が「憧れの大人」を取材
武田ファーム
武田 幸彦(たけだ ゆきひこ)さん
◆芽生えた農業への熱意
鹿島区で年間20種類の野菜、そして米を出荷している武田ファームの代表・武田さんが、家業の農業を受け継ごうと考え始めたのは、アメリカでの農業研修期間でした。
日本では経験できない、大規模な農業形態での過密なスケジュールでしたが、仲間と働くことが楽しく農業に熱中していきます。市場で自分たちが育てた作物のおいしさを直接伝える中で、買い手と濃い関係を築けるのも魅力でした。加えて、大規模灌漑(かんがい)などの最新技術を学びました。農業の面白さや手応えを掴(つか)み、日本に戻り農業を始めたいと考え始めた矢先、東日本大震災が発生したのです。
◆福島で農業を始める決意
震災により農業を地元で始めることはいったん白紙にしましたが、農業に関わることを諦めませんでした。この機会に「売る側」の経験を積もうと決意し農業系の会社に入社します。そこでは、入社1年目から多くの経験を積ませてもらいながら忙しい毎日を過ごしました。
会社の仕事にやりがいを感じる一方で「自分が福島で農業をやらなくては」という気持ちが募り、入社5年目で退職します。自分が食べておいしいと思うものを、安全性や新鮮さを踏まえて販売するという気持ちを胸に古里南相馬で農業を始めました。
◆「武田スタイル」農業
「お客さんに必要なものを届けたい」との思いを持ち、消費者の意見を取り入れながら生産する作物を柔軟に決めている武田さん。また「現状維持の状態では退化する」との思いから、まだ周りで作られておらず、自分たちで生産から商品化まで行えるような作物の生産に挑戦し続けています。
将来独立したい従業員や、古くから支えてくれている従業員がいる武田ファーム。一緒に働く従業員が多くの学びを得るように、さまざまな仕事を経験させるなど将来も見据えた、武田さんのこだわりを垣間見ることができました。
◆目の前のことに全力で!
武田さんの36年間の人生の中で困難を乗り越えるためにしてきた努力こそが、挑戦への強い原動力になっていると思います。「一度決めたことは行動してみる。一生懸命やれば、絶対何かにつながるよ」と、私たちの心に響くエールを送ってくれました。
●編集後記
私たちが日々食べる野菜には、生産者の思いや経験が詰まっている。そんな当たり前のことに改めて気付かされました。取材時に頂いたミニトマトの優しい甘さに感動しつつ、この甘さにも武田さんのアメリカでの研修や会社で培った経験が詰まっていると感じます。これらの多様な経験を礎にして、「好き」を大切にしながらさまざまな形で挑戦を続ける武田さんに、多くの経験を積み多角的な視点を得ること、そして好きなものを見つけ一生懸命に取り組み、挑戦していく大切さを教えてもらいました。
-編集部員代表 原町高校2年 猪狩(いがり)ひよりさん
(一般社団法人あすびと福島編集協力)
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