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今年のビッグニュース!(植物編)

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長野県栄村

希少動植物調査員からの報告(38)

先月号に引き続き、今回も本年度調査でのビッグなニュースをいくつか報告します。今回は、植物編です。

◆キンセイラン確認!
2022年秋、秋山地区にお住まいの方から、山中に野生ランのような葉をもつ植物があるとの情報をいただきました。その場所まで同行していただいて確認したところ、確かに野性ランです。その方も、まだ花は見たことがないとのことでした。
そこで、2023年6月、花の時期を待って再びその場所を訪れてみました。そうすると、薄暗い森の林床で、そこだけぽっと明るくなったような黄色い花が咲いていました。初めて見る野性ランでした。
調べてみるとキンセイランです。この植物は、現在、環境省:絶滅危惧II類、長野県:絶滅危惧IA類のトップクラスの希少な植物でした。
漢字では「金星蘭」と書き、美しい花が金星に似ていることから名付けられたようです。その名付け親が、実は昨年のNHK朝の連続テレビ小説「らんまん」のモデルとなった牧野富太郎博士です。この植物は、確か「らんまん」の中でも、第2週のタイトルになっていました。その花に栄村で出会えるとは!本当に感激しました。
しかし、こうした野性ランの多くは、県内でも盗掘被害などにより、絶滅の危機に瀕している種が多数あるのが現状です。しかし、ランは周りの土にいる菌と共生しているので盗掘しても育ちません。今後大切に守っていきたい植物です。

◆タコノアシ、再確認!
変わった名前を持つ植物ですね!小さな花がてっぺんに放射状に広がり、その花の様子が蛸(たこ)の足の吸盤のように見えること、また秋に実や葉が真っ赤に紅葉した姿が、まるでゆで蛸のように見えることなどから、この名前が付いたようです。
タコノアシは、川原や湿地などに見られますが、生育に適した環境の減少などによって、環境省:準絶滅危惧、長野県:絶滅危惧II類の希少種になっています。
村内では、栄村出身の植物学者である石沢進先生により、過去に小滝にある四ッ廻りの運河跡周辺で確認されていました。その後、記録がなかったのですが、私たちの昨秋の調査で再び川原の複数の場所で少数ながら再確認しました。
時々、大水などの出水によって、いったん植物が洗い流されるなどの攪乱(かくらん)が起きる川原でもしぶとく生き残り、新たに芽吹くようです。
この周辺では、同様に川原の厳しい環境に耐えて生育するケイリュウタチツボスミレやヤシャゼンマイなどの植物も見つかっています。村内でも特異な生育環境に生きる植物として、大切にしていきたいものです。

◆ムラサキミミカキグサ、新産地!
ミミカキグサ?これまた面白い名前が付いた植物です。この植物は、湿地の地面に張り付いて育つ、ごく小さな植物です。秋に付く実が耳かきのような形に見えることから、この名前が付いています。根っこの所々にある小さな袋でプランクトンなどの微生物を取り込んで栄養にしている食虫植物の仲間です。
ミミカキグサは黄色い花を付けますが、今回確認したものは、紫色の花を付ける種類です。わずか3mmほどの本当に小さな花です。本種も環境省:準絶滅危惧、長野県:絶滅危惧II類の希少種です。
これまで村内では、登渡(とど)切欠堤の湿地帯が唯一の確認地でしたが、今年度の調査で、新たに月岡山中にある湿地帯でも確認しました。
こうした場所は、イノシシのヌタ場や採餌場になることが多く、イノシシの侵入により生育地の消滅が懸念されます。生育環境とも合わせて保護・保全が必要な植物です。
(栄村希少動植物調査員・涌井泰二)

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