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ときの輝き

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大阪府池田市

■資料館の小部屋(その3)
現在、歴史民俗資料館は収蔵庫の空調設備改修工事のため、休館中です。展示をご覧いただけないため、8月号から4回にわたり、学芸員おすすめの所蔵品をご紹介しています。第3回は、木谷千種(きたにちぐさ)「針供養」です。

◇女性画家の先駆け・木谷千種
資料館には現在300点を超える池田ゆかりの美術資料が所蔵されています。「針供養」はこれらのうち日本画の一点です。木谷千種(1895~1947)は、近代の大阪を中心に活躍した女性画家として知られます。資料館では、平成14年(2002)に特別展「女性日本画家 木谷千種」を開催しました。
千種が活躍した大正から昭和初期、女性画家は流行職種となっていました。大正元年(1912)に20歳の女性画家・島成園が文部省美術展覧会(文展)に入選し、その快挙が新しい女性画家像として全国的に報道された話題を皮切りに、その盛況は、女性画家は女優と共に新しい流行の一つ、といわれたほどでした。
千種はそうした女性画家の先駆けといえます。大正4年(1915)20歳で第9回文展に初入選すると、翌年、成園らと共に「女四人の会」を結成、大阪三越で井原西鶴の「好色五人女」をテーマとした展覧会を開催しました。近松門左衛門研究家の木谷蓬吟(きたにほうぎん)と結婚した後は、画塾「八千草会」を創設し、女性画家の育成に力を注ぎました。
画家としても著名であった千種はまた、佳人、良縁を得た女性としても知られたようで、女性雑誌『婦女界』や『婦人俱楽部』において、化粧や髪型、結婚生活についても語っています。

◇千種と池田・室町
このようにモダンな女性であった千種が画家として歩み始めた場所が、叔父・吉岡重三郎が居を構えていた池田・室町でした。重三郎は、阪急電鉄の取締役や宝塚少女歌劇の経営部長を務め、小林一三から厚い信頼を受けた人物です。
池田・室町は、明治43年(1910)箕面有馬電気軌道株式会社(現阪急電鉄)が郊外の自然豊かな「新市街地」として開発した新興住宅地でした。大正4年、東京での修養を経て帰阪した千種は、この叔父の家に住まい、文展初入選作「針供養」を制作しました。資料館の所蔵品は、依頼により好評を博した入選作と同画題を描いたものです。
針供養とは、裁縫を習う女性が2月8日に折れた針を集めて淡島宮に納める風習で、風俗画の画題の一つです。モデルは大阪南地・富田屋の小八千代という舞妓であったようです。結婚前の少女が裁縫修養に親しむ様子が着飾った姿で可憐に表現されています。当時、女性画家の大半は山水画や花鳥画を描いていました。こうした画題の選択は師・北野恒富の影響のようですが、おそらく千種は、女性が女性を描く、新しい画家像をも意識して制作に挑んだのでしょう。
千種は大正8年(1919)頃には池田を離れ京都に移り住みます。しかし、近代の池田が新市街地として持っていた新しい空気は、千種の女性画家としての旅立ちに大きな影響を与えたと考えられます。
この作品は再開後の資料館常設展で展示予定です。ぜひ、作品をご覧いただき、近代池田の「ときの輝き」に思いを馳せてみてください。
それでは、次回をお楽しみに。

問合せ:歴史民俗資料館
【電話】751・3019

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