文字サイズ
自治体の皆さまへ

各務用水物語 永遠の水 40

12/17

岐阜県各務原市 ホームページ利用規約等

作 ・大堀一志
挿絵・廣江貴子

工事開始の時の日当は十銭だった。その後十五銭に値上げしてここまで来ていた。それをさらに二十銭に引き上げるという忠三郎の提案に堂内がざわめいた。 
地震から三か月。多かれ少なかれ被害を受けた各戸は自分たちの生活の手当てもままならず、未だ途方に暮れている状態だった。中には家屋が半壊になったままで手を付けられず、そのまま住み続けている者も大勢いた。大きな余震が無くて幸いではあったが、いつまた揺れが来るか分からない不安の中での毎日だった。そんな中でも生活していくには当然ながら何がしかの金が必要である。 
とりあえずの食い扶持(ぶち)を稼ぐには人夫に出るのが最も手っ取り早い。そこで日当が二十銭になると聞いて男どもは我先にと手を挙げた。そして、何としてでも早く復旧させて来年の田植え前までに水が来るようにしなければ…今や工事関係者のみならず農民の誰もが同じ思いに駆られていた。 
崩れた所を修復し、亀裂の生じた箇所には芥見地区で出た粘土を張り付けては固めた。が、最も大変だったのは津保川の掛樋(かけひ)の修理だった。これには業者の手を借りることになり、予定外の出費になったうえ予想以上に日数が掛かった。

やがて明治二十五年の春を迎えようとしていた。そんなある日、浄念寺の本堂に忠三郎と岡田只治の二人が向かい合っていた。
「今年の田植えには間に合わんな」
「仕方ない。みんなよう頑張(がんば)ってくれた」             

―つづく

【これまでのあらすじ】
濃尾大震災に見舞われた用水の復旧が進まない中、明治25(1892)年1月、忠三郎と只治が発起人全員と各村の戸長らを浄念寺に召集した。被害の報告後、忠三郎から人夫賃を20銭に上げたいと提案があり…

【市内図書館で閲覧可】
これまで掲載した「幕末余聞天狗と魁」などの小説を、市内図書館で閲覧・貸出しています。ご利用ください。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒104-0061 東京都中央区銀座3-4-1 大倉別館ビル5階

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU