■columu1 方言×ふるさと
◇離れて気付いたふるさとの言葉の温かさ
久保 侑子(いくこ)さん(80)(妙見町)
学生の頃、地元五十崎を離れて長崎の女子大学へ通っていました。寮に住んでいて、お風呂に入るときに「はまってこうわい」と言ったら、みんなに笑われたのを覚えています。「長崎ではおかしな表現なんだ」と方言で話すのをためらったこともあります。でも、ふるさとを離れたら方言をすごく恋しく感じました。小田川や神南山などの景色もしみじみ懐かしい――。帰省すると地域の人の「元気にしとったんかい」という言葉に「あぁ、ふるさとに帰ってきたな」とホッとしたのを思い出します。地元を離れて初めてふるさとの温かさや良さを実感しました。
今、娘と孫と暮らしています。同じことでもそれぞれ言い方が違うので、会話をしていて面白いです。私の方言で話が盛り上がることもあります。最近の子は方言をあまり使わないけど、なくなると寂しいので、家族との会話を大切にしてほしいなと思います。
■地域のおじいちゃん、おばあちゃんと選んだ 今日から使える「内子の方言」16選
ここで紹介する方言は、町誌や地域の方言集などを元に、地域のご年配の人たちと一緒に選びました。今でも使う方言や、お気に入りの方言などを昔の思い出話とともに紹介します。どのくらい知っているか、家族のみんなと話してもらえるとうれしいです。
参考にした本:『こもとれん話』『内子の方言集』『大瀬・暮らしのこみち』『五十崎町誌』
◆ばっぽ(餅)
使い方:つきだちのばっぽがでけたぜぇ。はよ、一つ食べておみや
背景:「寒餅(かんのもち)」といって、最も寒い時期にたくさん餅をついて、保存食にしていた。その餅でかきもちや豆入りなどのおやつも作っていたそう
◆みょーと(夫婦)
使い方:なんぼになっても仲のええみょーとでおろうや。なぁ、母ちゃん
背景:昔は農作業も山仕事も家族みんなでしていた。夫婦が力を合わせないと、どんな作業も上手くいかないので自然と協力できていた
◆ほうべた(頬)
使い方:赤子のほうべた、つるつるのばっぽみたいじゃのう
背景:昔は兄弟が多く、近所で助け合いながら子育てをしていて、子どもが赤ちゃんを背負い、おもりする姿もよく見られた
◆ちんちまんま(白いごはん)
使い方:ちんちまんまに赤じいじそえて、今日はおごっつおーよ
背景:「赤じいじ」はかまぼこのこと。昔は麦やトウキビ、粟を混ぜたご飯だったので、ちんちまんまはめったに食べれないごちそうだった
◆へさーに(しばらく、長く)
使い方:へさーに会わなんだが、元気にしとったかな?
背景:久しぶりに会ったときなどに使うことが多い。他には「へさーに幸せでありますように」「この花はへさーに咲いとる」など
◆かんこおり(氷が張ること)
使い方:さぶいはずよ、かんこおりがはっとらい
背景:当時は今よりも雪の降る量が多く、冬場は霜柱が立つほど寒かったそう。舗装されていない道路も多く、よく氷が張っていた
◆ずんべのかわ(生意気なこと、えらそうなこと)
使い方:ようしもせんのに、ずんべのかわぬかすなよ
背景:知ったかぶりや何でもできるふりをしている人に対して言うことが多い。今でも年配の人たちはよく使うそう。「てんごのかわ」も同じような意味
◆ひがしやま(干し芋)
使い方:ひがしやまをモングリモングリしよったら、甘(あも)うなるけんの
背景:昔は各家庭の床下には芋壺があり、サツマイモを入れて保存食にしていた。ふかし芋や芋団子にしておやつにしていた
◆よいたんぼ(酔っぱらい)
使い方:とんとががいなことすぎて、よいたんぼになられんぜ
背景:「とんと」はお酒のこと。飲みすぎて、酔っぱらった人を言う。昔は祭りや節句などのお祝い事には、よいたんぼがいっぱいだったそう
◆ろーくに(真っすぐに)
使い方:いんぐりかんぐりにならんよう、ろーくに植えやの
背景:「いんぐりかんぐり」は曲がりくねること。「この道はろーくで歩きやすいわい」など、平らな地形のこともろーくと言う
◆ぼろでねじた(小雨ですぐ降り止む)
使い方:ぼろでねじてくれたけん、えかったのう。農作業ができらい
背景:雨が降ると大事な農作業ができないので、雨が降らなくてよかったと思ったときに言うことが多い。「ぼろ」は小雨のこと
◆あまぼし(干し柿)
使い方:今年もあまぼしをだいぶこしらえたんよ
背景:昔の人にとって特別なおやつ。子どもたちは正月に近所へ新年のあいさつをしに行き、あまぼしやミカンをもらうのが何よりの楽しみだった
◆どば(カエル)
使い方:大けなどばがいでごでへせりよるわい
背景:「いでご」は溝、「へせる」は鳴くこと。ヒキガエルは「おかもりどば」と呼び、炊事場のたき口によくいるので、火を守る生き物として大事にされた
◆はねまるぐ(転ぶ)
使い方:きょろまつじゃけん、はねまるいで、どべになってしもうたねや
背景:「きょろまつ」は落ち着きがないことで、「どべ」は最後。地域によっては「はねこける」と言うところもある
◆ぞぶる(川をざぶざぶと歩く)
使い方:ええのう、わかいしらが勢いよくぞぶりよるわい
背景:今では川にぞぶる人はあまりいないが、いかざき大凧合戦では相手の凧を切り落とそうと、たくさんの大人たちのぞぶる姿が見られる
◆いやしんぼ(食いしん坊)
使い方:いやしんぼうじゃなぁ、うちの分まで食べてしもうて
背景:戦後は食べ物がない時代。学校の教室の黒板に書かれてある、今週の目標が「よその柿を取られん」だったこともあったそう
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