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壷中雑記(8)―歴史文化博物館から―古の集落跡「軽野正境遺跡」

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滋賀県愛荘町

遺跡から見つかる昔の人々の痕跡(こんせき)には、当時の生活の知恵や技術を見ることができます。その中には、現代に通ずるものの先駆けや元になったものも見つかっています。
古代人の生活の痕跡を見てみましょう。

■古代のカマド
軽野正境(かるのしょうざかい)遺跡は蚊野甲、今の秦荘スポーツセンターが建つ場所に所在する古墳時代の集落遺跡です。古墳時代のカマドをもつ竪穴式住居跡が二棟見つかっています。出土遺物から五世紀後半に作られたことがわかっています。
古代のカマドには「造り付けカマド」と「移動式カマド」の二種類の形があります。軽野正境遺跡のカマドは造り付けになります。
造り付けカマドの構築は、まず住居構築の際に位置を決めます。カマド本体の「燃料部」と、住居内部に薪(まき)を焼(く)べる「焚口(たきぐち)」の手前に作る「焚出部」という窪(くぼみ)み、「煙道」の素掘りを行います。住居の床面には、燃焼部、焚出部のスペースを残して貼り床作業を行います。荒堀が済むと、燃焼部の下面の「火床」中央付近に石や瓦(かわら)などを用いて「支脚」を設定します。そして、支脚の安定と火床の整理をかねて土と粘土による埋め戻しが行われます。カマドの基礎ができると、その両側に粘土と山砂による「袖」が築かれ、上方には「天井」が架けられます。
軽野正境遺跡のカマドは、比較的残りの良い状態のものが見つかっています。その中には支脚部から煙道にかけて焼けた痕跡が無いものもあります。逆に、放置されすぎて風化浸蝕(しんしょく)を受けたものなど残りの悪いものもあります。
遺物は甕(かめ)、高杯、壺(つぼ)、杯といった食器やカマドの材料と考えられる土器が見つかっています。

■中世の工房跡
軽野正境遺跡からは室町時代の鋳造工房跡も見つかっています。
工房跡からは鋳型が見つかっています。鋳型以外にもきのこ様土製品、三叉土製品(みつまたどせいひん)が出土しています。三叉土製品は、先に焼かれた梵鐘(ぼんしょう)の竜頭(りゅうず)や撞座(しょうざ)などの部品を梵鐘本体に組み込んで焼く際に、ひび割れを防ぐために用いるエラモと呼ばれる道具です。
この遺跡で製作された鋳造品は明確ではなく、梵鐘とする説以外には、ナベやカマと考えられています。

古代の生活は、遺跡から見つかる一部の痕跡からしか確認できません。しかし、遺跡から見つかった人々の痕跡をもとに、様々な生活風景を想像してみると面白い発見があると思います。

歴史文化博物館学芸員 山本剛史

■参考文献
秦荘町教育委員会一九七九『軽野正境遺跡発掘調査報告書』
宮崎幹也一九八八「竪穴住居に付随するカマドの検討―滋賀県下の検出例から―」『紀要第一号』財団法人滋賀県文化材保護協会

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