「一隅(いちぐう)を照らす~弱い立場の人に寄り添う行政を目指して~」町長からのメッセージ
「町の2023年の取り組み」その2~あさぎり地域づくり共同組合の設立について~
■少子化で顕在化する課題
全国で少子化が進んでいます。町ではその対策として子育て環境の整備と、安定した雇用の場所をつくることが必要だと考えます。
少子化の状況については、町の出生者数が年々減少しています。今年の成人者数は184人でした。令和4年度のあさぎり中学校の卒業生は148人、令和5年度のあさぎり中学校の入学生は141人、5校の小学校の入学児童は117人、令和3年の出生者数は80人、令和4年は71人でした。
町の基幹産業は農業です。今、町内の住民から聞こえてくる声には、今後どうやって農業用排水路を守るのか、農地の畦畔の草を刈る担い手不足の対策はあるのか、不採算の農地を誰が耕作するのか、林地からの土砂流出をどうやって防ぐのか、農地や宅地をどうやって災害から守るのか、農業・商工業の後継者をどう育てるのかなど、深刻な問題が提起されています。為政者(政治を行う人)はこの問題に真剣にかつ責任を持ってとり組まなければなりません。
■課題解決のために
そのような状況下で国は2020年6月に「特定地域づくり事業協同組合制度」を立ち上げ、令和4年6月までに全国で54組合が立ち上がりました。熊本県では五木村に引き続き、令和5年3月16日に山鹿市と天草市、そしてあさぎり町が熊本県知事の認定を受けました。
町では「あさぎり地域づくり協同組合」という名称で創立しました。そもそものこの組合制度は不足している担い手(労働力)を確保し、後継者(人材)を育成するのが目的ですが、移住者やUIJターン者など地域の外部から人を呼び込むためには、安定かつ安心して働くことができる職場が必要であるという認識のもと、町内での「仕事づくり」が重要な任務です。
■新しい働く場の確保
町内において「仕事がない」と「人手が足りない」が併存する理由は、安定的に通年で雇用する職場が少ないからです。この課題を解決するためにマルチワーカー(同時に複数の仕事にたずさわる働き方)という働き方を取り入れると、短期的な仕事の依頼を組み合わせて、通年の仕事量を確保できます。個別の事業者の中から通年雇用できない農家などが組合員となる事業協同組合を設立・運営し、移住者や地元に残る人材をマルチワーカーの職員として継続的に雇用する仕組みになっています。
国はこの仕組みを維持するために、人件費を対象とする手厚い交付金制度を整備し、本制度の目的に沿った場合に限り労働派遣法の特例措置を設け、雇用の不安定が心配される派遣雇用を行政支援の対象としています。
制度対象の「人口急減地域」の主要産業が農業などの第1次産業を中心とした地域という事情もあり、これまで認定されている組合を見ると、第1次産業を主な派遣先の業務とするケースが大部分を占めています。町でも当分の間は組合員となる事業者を農業者主体とし、農業を派遣先として事業を進めます。本町の組合設立時の派遣先事業所は8事業者(農家)としていますが、町内に事業所を置く農業者であれば、どなたでも組合に参加でき派遣先事業者になることが可能です。
将来的には、農業に限らず各業種の事業者も参加いただけるように進めていきたいとも考えているところです。
■移住・定住の促進
しかし、マルチワーカー(組合では「職員」と呼びます)を採用するまでしばらくの期間が必要です。当分の期間は需要に十分に答えることができませんが、ご理解をいただき、長い目で育てていただければと希望します。また、移住してきたマルチワーカー(職員)と仲良くお付き合いいただき、同じ町民として受け入れていただきたいと思います。
マルチワーカー(職員)の移住・定住を促進するためには住宅を準備しなければなりません。令和4年度において、町内の空き家の調査を行いました。今後は空き家プランを立て、移住・定住者に提供できるよう事業を進めます。
■持続可能な地域のために
この「あさぎり地域づくり協同組合」は、基幹産業である農業の担い手不足確保のため、親族以外が農地や施設を引き継ぐ「第三者による事業継承」も視野に入れています。同組合があさぎり農業に貢献できる組合になり、移住・定住が促進されることで、少子化対策になることを願っています。壮大な計画です。目的達成のためには、町民の皆さんのご理解とご協力が必要です。よろしくお願いします。
参考資料:日本農業新聞令和4年11月27日掲載現場からの農村学教室農林中金総合研究所調査第一部主事研究員 石田一喜氏著)
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