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特集 ウィズ ワイルドライフ 〜鳥獣被害との向き合い方〜 (1)

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静岡県島田市

朝、市内に住む農家の男性が、何者かに荒らされた畑のブロッコリーを見て、大きなため息をついた。「収穫が楽しみだったのに。おそらく犯人はニホンジカ。野菜が大好物だから、農家にとっては非常に厄介な存在さ。最近は、住宅地の近くでも見掛けるよ」と話す。これは氷山の一角で、イノシシやシカなどによる被害は、市内各所で発生している。
農林水産省発表の「令和元年度食料・農業・農村白書」によれば、平成30年度における全国の野生動物による農作物被害額は約158億円。その額は年々減少しているものの、未だ営農意欲を減退させる規模だ。野生動物による被害(鳥獣被害)は、数字として表れる以上に地域に影響を及ぼし、耕作放棄や離農の原因になりかねない。
鳥獣被害は、単に野生動物を駆除すれば収まるものではない。解決の糸口は、野生動物を取り巻く環境の変化と、人間が彼らに与える影響について、理解を深めることにある

■現状
まちの課題を知る

鳥獣被害はなぜ起こるようになったのか。この問題は、環境の変化によって生じ、さまざまな要因が絡んでいるものと考えられている。市の現状を確認し、県農林事務所の担当者に、鳥獣被害に至る背景を聞いた。

●「次は、あなたが被害者になるかもしれません」
静岡県志太榛原農林事務所 地域振興課
寺田真子(てらだまさこ)主査

市が毎年、静岡県に報告する「野生鳥獣による農作物の被害状況調査」によれば、市内では野生動物を捕獲しても、被害が減らない状態にあるとされる。平成29年度から令和元年度までの有害鳥獣捕獲実績は、954頭、909頭、870頭。被害額ベースでは、それぞれ約1580万円、約1526万円、約1842万円。捕獲数と被害額が、近年高止まり傾向にあることが分かる(グラフ1)。このうち、イノシシとニホンジカの捕獲数が、全体の9割近くを占める。
また、市内の猟師(狩猟免許取得者)は現在、約100人。平均年齢は約68歳で、高齢化などによりその数は減少し続けている。しかし、捕獲依頼が跡を絶たず、一人一人の負担は大きくなる一方だ。慢性的な担い手不足と、被害状況の高止まり傾向から、市と猟友会の活動だけでは、鳥獣被害に対応しきれない。

(グラフ1)
市内における野生動物の捕獲数と農作物被害額の推移(農林整備課提供資料より作成)

里で暮らす人間と森に住む野生動物には、かつて里山という「間」が広くあり、里山での人間の営みは、野生動物に圧を掛ける役割を持っていました。人間はしばしば里山に入り、木材を薪や炭の原料として、落葉・落枝を畑の肥料として利用していましたが、現在は多くの薪炭林(しんたんりん)が使われず、放置されています。人間が薪炭林を活用しなくなったことは、野生動物への圧力が低下した原因の一つといわれています。植林されたクヌギやナラなどから落ちるドングリは、野生動物の貴重な食料。人が踏み入らなくなった竹林は、やがて野生動物のすみかとなりました。こうして里山の機能は低下し、人間と野生動物の生活圏が接するような今の環境ができてしまったのです。

人間の生活圏に進出した野生動物は、農作物がより栄養価の高い食料だと学習し、畑を荒らします。気を付けたいことは、ポイ捨てされたごみでも、動物にとってはごちそうになる場合があること。今後、さらに人慣れが進めば、人間を襲ったり家屋を荒らしたりする被害も出てくるでしょう。ごみの一例は、この問題が決して他人事ではないことを物語っています

■相手
野生動物を知る

鳥獣被害への対策は、相手となる野生動物を知ることから始まる。生態や習性などを知ることは、対策を講ずる上で非常に大切なこと。有害鳥獣とされている主な野生動物の特徴をまとめながら、農作物被害を受けた農家の声を聞いた。

●「一人一人の自衛意識と地域の協力が不可欠です」
身成自治会長/農家/林業家
原田昌彦(はらだまさひこ)(川根町身成)

有害鳥獣とされている野生動物の中で、特に気を付けたいのは、イノシシやニホンジカ、ニホンザルです。ニホンジカは樹皮や新茶の新芽などを食べ、サルは群れで農作物を食べてしまいます。そしてイノシシは、畑や水田を広く荒らします。これらの被害は、営農意欲をひどく減退させます。家庭菜園を楽しむ人も、例外ではないでしょう。丹精込めて作った野菜が、めちゃくちゃに荒らされてしまうのは、本当に悔しいです。
本来、野生動物は臆病で警戒心が強いものですが、最近は人慣れの影響か、大胆に行動する動物も増えました。今の環境を変えることは、決して容易ではありません。今後は、農家一人一人が自衛意識を向上させることはもちろん、地域で協力して被害対策に取り組む必要性も増してくると思います。

◇有害鳥獣とされている主な野生動物
≪ニホンジカ≫
体長:約0.9m〜1.5m
食性:草食性
好物:ほとんどの植物
身体能力:1.6m以上の柵を飛び越える。ただし、かかとは丈夫でなく、網などの傷つけるものを嫌う
繁殖力:毎年平均1頭

≪イノシシ≫
体長:約1m〜1.7m
食性:草食に近い雑食性
好物:芋類やタケノコ、ミミズなど
身体能力:時速約45kmで走る。20cmの隙間をくぐり抜ける。70kgの石を簡単に動かす
繁殖力:毎年平均4〜5頭

≪ニホンザル≫
体長:約50cm〜60cm
食性:雑食性
好物:ミカンやリンゴ、カキなど
身体能力:優れた視力を持つ。木登りやジャンプが得意
繁殖力:2〜3年に平均1頭※一度味わった恐怖体験を忘れない。場所や状況も記憶する。

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