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自治体の皆さまへ

特集 わたしがわたしであるために(2)

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三重県四日市市

■当事者の想いを聞く
▽心の準備をさせてくれた仲間に感謝
四日市市在住 勇(いさむ)さん

フィリピンで男として生まれ育ちましたが、遊ぶ相手はいつも女の子でした。小学4年生のとき、姉に「女性の服が着たいの?」と聞かれ、たまにそう思うと話したことが、姉から母に伝わりました。母は、なんとなく気付いていたそうです。ただ、父はそんな私を周りからの差別やいじめから守る意味で、「彼氏を作らない」「事実を隠す」という二つの約束を守るように言いました。約束を守っていましたが、言動で周りに気付かれたときは「ゲイだ」とからかわれたりしました。
高校卒業後は、家族で日本に移り住みました。職場の仲間と遊んでいたときスカウトされ、モデルの仕事も始めました。どちらにも、ゲイであることを隠して。でも、大切な仲間に、嘘をついている自分が嫌になり、「自由になりたい」と思うようになりました。仕事を失うかも、傷つくことになるかも、などたくさんの不安や葛藤はありました。職場の先輩にカミングアウトしたところ「分かっていたよ」と受け止めてくれて、周りに言おうとしていること、これからのことなど真剣に相談に乗ってくれました。周りの仲間、先輩のおかげでようやく私は自由になれました。私は、自分をさらけ出したことを心から良かったと思っていますが、そうするには周りに温かい環境があるかどうかが大切だと強く感じました。カミングアウトした前も後も、変わらず接してくれる仲間に感謝しています。

▽自分を演じることなく生きられるようになりました
四日市市在住 渡部京李(わたなべきょうり)さん

物心が付いたころから自分の性別に違和感を抱いていました。なんとなく、両親からの見られ方が姉弟と違うなと感じていて、どうしたら認めてもらえるだろうと考えていました。その結果、何でもできる自分になろうと、勉強もスポーツも完璧にこなさなければと思うようになりました。
でも、自分に負荷をかける生き方は苦しくて、大学生の時に摂食障害になってしまいました。自分の性別が何なのかという不安も、摂食障害であることも誰にも言えずに過ごす日々は本当に苦しかったです。
教員になり、人権問題に接する機会が増え、そこで出会った人に、「解放されていない先生に教えてもらっても、子どもたちが解放されるわけがない」と言われたことがありました。落ち込みましたが、自分を振り返るきっかけとなり人生の転機になったと思います。私は性的にはマイノリティですが、他ではマジョリティ(多数派)に属していて、マイノリティの人をどこかで「かわいそう」と差別していたことにも気付きました。そして、差別は周りが作っていると分かったことで楽になり、10年以上患った摂食障害も治り、自分を演じることなく生きられるようになりました。
今後、生きづらさを抱えている子どもたちが、ありのまま生きられるよう関わり続けていきたいです。

▽社会は変えられると信じています
一般社団法人ELLY(エリー) 佐野恒祐(こうすけ)さん

私は女の子に生まれたことに違和感を持ちながら育ちました。小学3年生のときに生まれた弟の裸を見て、自分とは違うことに衝撃を受けました。でもその気持ちを誰にも言えませんでした。
その後はずっと男の子っぽい女の子で過ごしました。元の名前は「琴菜」というのですが、周りからは「名前だけは女の子で救われたね」と言われたりしました。
20歳を過ぎ、自分の性別に対する違和感を両親に相談しました。義父は、「弟の迷惑や!近所の恥やわ!」と、一緒に考えることも気持ちに寄り添ってくれることもありませんでした。これをきっかけに、家族や周りの人に理解を求めることをやめました。そして「社会的に男性として生きる」という覚悟を決めてタイへ行き、性別適合手術を受け、戸籍上の性別を男性に変更しました。しかし、今度は女だったことを隠す日々が始まりました。
縁があって一般社団法人ELLYの活動に関わり始め、LGBTに関する講演をするようになりました。初めは、自分を語ることが嫌でした。しかし、講演をするたびに、自分を振り返る機会が増え、また、私の話を聞いた子どもたちが、誰にも言えなかったことを相談してくれるなど、話して良かったと思う瞬間をくれたことで、私は私のままでいいんだと思えるようになりました。
私の夢は、かっこいいお父さんになることです。家庭を持つことを想像したとき、自分の子どもの未来を守りたい、選択肢を狭めてしまうような世の中を変えたいと思うようになりました。ELLYの活動を続けてきて、だんだん社会が変わっているのを肌で感じています。これからもマイノリティ・マジョリティの両側から発信し三重県を変える存在であり続けたいです。

●多様な時代を豊かに生きるために
四日市大学総合政策学部教授 小林慶太郎さん
「よっかいち人権大学あすてっぷ」などでLGBTに関する講演の講師を多数務める

まだまだ、「LGBTって何?」「自分の周りにはそんな人いない」と言う人が多いと感じます。性的マイノリティが周りにいないと思うのは、当事者が社会的な立場を考慮したり、他者からの反応を恐れたりして、周りに言えていないからとも言えます。でもこのまま性的マイノリティがいないことにしてしまい、みんなが問題に目を向けなければ、問題提起がされないため、政策の検討もされず、現状が変わらないという悪循環に陥ってしまいます。
自分と違うものを完全に理解することは難しいことです。しかし、一人ひとりが違うものを嫌い、排除していては、誰もが暮らしやすい社会は実現しません。むしろそれぞれがお互いの存在を認め合い、その多様性から刺激を受け、違いを楽しめるような心のゆとりを持つことができてこそ、人は心豊かに生きていけるのではないでしょうか。
性の多様性を肯定し、支え合っていくシンボルとして、虹色(レインボーカラー)がしばしば使われます。虹はさまざまな色が存在することによって初めて成り立ちます。多様な存在を認め合い、支え合うことで、虹の色彩のような豊かな未来が、ここ四日市で広がっていくことを願っています。

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