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ふるさとの文化財探訪 第97回

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大分県九重町

『国蝶オオムラサキとエノキ』

文化財調査員 佐藤三千代

50年以上昔のことである。山の仕事から帰ろうとすると、下で私を待つ人がいた。あのエノキの持ち主を聞かれたのだ。佐賀県から来た昆虫愛好者であった。
エノキの上を舞う日本の国蝶オオムラサキがいるから伐採しないでほしいということであった。これを機に専門外の昆虫にも目立つものや珍しいものに多少興味を持つようになった。家の近くに、クヌギやハルニレがある。
傷ついた樹幹から流れ出る樹液を吸いに今の居酒屋のようにいろいろの昆虫が集まって来る。面白そうなので樹液が出るようにと石で傷をつける悪さをしたことがある。
カナブン、カブトムシ、クワガタムシ(おにむし)、オオスズメバチ(だごばち)等に混じって、時々食草がエノキとされているオオムラサキの姿を見ることがあった。
一見地味に見えるが、強者の中でも物おじせずファイト満々に汁を吸っている。羽を開くと美しいムラサキが目立つ上品な大型の蝶である。
放牧牛とクララ(マメ科の植物)に育てられるオオルリシジミは飯田高原で発見された。
ヒヨドリバナ類に集まり日本中を南北に渡り飛ぶアサギマダラも九重町内でも最近よく見かけるようになった。
マツタケがアカマツ林にのみ生えるように特定の樹林としか共生しない菌根菌で一種のみと共生する菌種もある。
キノコは植物と共生する菌種で、地上や地下で植物を分解し土壌化して栄養を植物に提供する。
エノキは用材としてはあまり賞用されない樹かもしれないが生物にとっては重要である。キノコのヒラタケはエノキが一番できやすい。記念樹、昔の一里塚のような道路標識等に役立っている。一人では生きられない。生きるものの根源は植物すべてにあるようだ。
宝泉寺のエノキは町内一番の老古木で、九重町選定天然記念物であるが、ヤドリギが着生し、弱ってきたように見えるが、多くのオオムラサキを育ててくれたことでしょう。
近くのエノキを観察していると、法隆寺の国宝、玉虫厨子(たまむしのずし)の玉虫色のタマムシ(玉虫)ブーン、ブーンと羽音を立てながら飛んでいた。
タマムシの食草もエノキだったのです。

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