その他 「つながりを運ぶ、移動販売。」
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- 発行日 :
- 自治体名 : 島根県奥出雲町
- 広報紙名 : 広報奥出雲 令和7年7月号
■~見守りと安心が広がる、奥出雲のまち~
高齢化や人口減少が進む中、奥出雲町においても、地域から商店が減少し、買い物に困る方が多くなってきました。こうした町民の暮らしを支えるため、町では移動販売の取り組みが広がっています。それは単なる「買い物の手段」ではなく、「見守り」や「近所のつながり」の場としての役割を果たしています。
この取り組みを支えるため、補助金や支援施策も積極的に導入。移動販売を通じた地域のつながりづくりを後押ししています。
今回は、町内で活躍する3つの移動販売の現場を訪ね、人と人とのあたたかなつながりと、そこに寄り添う町の支援のかたちをご紹介します。
◆[ともに号みざわ小さな拠点づくりの会]
◇暮らしに寄り添う、やさしさ運ぶ
「買わなくてもいい、話すだけでもいい。モノ以外に得られるものがある」と語るのは、みざわ小さな拠点づくりの会会長の白根裕文さん。若い力が地域に集まり、支え合いのかたちを模索しながら移動販売に取り組んでいます。
こうした取り組みを支えるため、奥出雲町では島根県の補助金を活用し、移動販売車両を購入。整備した車両の貸与を受けることで、より多くの地域を巡回できるようになりました。
さらに、「小さな拠点づくり」へ町の補助もあり、見守り活動との連携が可能に。利用者の様子を見守ることで、日々の安心にもつながっています。
小さな拠点づくりの会の落合光一さんは、毎回の訪問で利用者の小さな変化を見逃さないよう、見守りチェック表の記入も欠かしません。足腰に不安がある方には玄関先まで商品を運ぶなど、細やかな心づかいも。
「落合さんとは近所の話や、畑の話も何でもできて楽しいの」「自分の好きなものを買える楽しい」と話す利用者さんも。
◆[きずな号かめさんお助け隊]
◇「販売」より「見守り」。亀嵩から広がる安心の輪
「物を売る」よりも「人とつながる」ことを大切にする、亀嵩公民館長の高橋榮子さん。地域を巡る中で、一人ひとりの様子に目を配り、ささいな変化を見逃さない取り組みを大切にしています。
「買い物の助けになるのはもちろんだけど、それよりも顔を見ることが大事。利用者さんたちは話をするのを楽しみにしておられる方も多く、安心が生まれるんです」と高橋さん。
また、きずなプロジェクト会長の川西誠さんは「地域のつながりが減る中で、こうした会話の機会をつくっていくことが大切」と話します。
「なかなか買い物もいけないし、来てくれてお話しできて嬉しい」と話す利用者さん。見守り活動スタッフと玄関の花がきれいに咲いたことを楽しそうにお話ししたり、次のお宅へ向かう販売車に手を振って見送られる姿が印象的でした。この「きずな号」もまた、町が整備した移動販売車両の導入によって、販売日数の拡大が実現しました。
◆[とくし丸伊藤さん]
◇名前で呼び、心でつながる。伊藤さんの「とくし丸」
1.ターンで奥出雲に来た伊藤瑞紀さんは、退職後「地域のためにできることを」と移動販売を始めました。
「〇〇さんと下の名前で呼んでもらえるのが嬉しい。年を取ると”おばあちゃん“って言われるばかりだから…」と話す利用者さんの言葉には、信頼と温もりがあふれていました。
伊藤さんは「みなさんの顔を思い浮かべながら、あの人はこれが好きだったなとか考えながら準備をする時間がとても楽しい」と話します。
八川地区の古市では、週一回の販売の日、地域の方が集まり一緒にお買い物。「最近は近所の人とも会って話すことが減っちゃったからね。この日に顔を見られるのも嬉しいの」と話す利用者さんも。歩行に不安がある方を他の利用者さんが支えたり、荷物を運んだりなど、お互いに協力される姿も見られました。この「とくし丸」は、事業開始時に奥出雲町と島根県からの補助金を活用し、車両を整備。その支援が、現在も地域を笑顔で満たす事業の土台となっています。
「からだに気をつけて、できる限り長くこの仕事を続けていきたい」と伊藤さん、「販売の日が待ち遠しい」という声のもとに、毎日地域に活気を届けています。
奥出雲町の移動販売の取り組みは、商品と一緒に「心」を届けるために、今日も元気に走ります。
誰かが見ていてくれる。そんな小さな安心が、奥出雲町の暮らしをやさしく支えていました。
◆奥出雲町では、人口減少や高齢化に起因する様々な課題があり苦戦しています。今回紹介する移動販売の取り組みは、こうした「買い物ができない」といった課題に対して、地域の皆様のチャレンジや支えあいの思いによって、「物を届ける」手段にとどまらず、人とのつながりや地域の見守りにつながっています。
町では、このような地域に根ざした取り組みを今後も継続していけるよう、車両の整備や運営事業への助成を行い、地域の皆様や事業者との連携を深めていきます。今後も、誰もが安心して暮らし続けられる地域づくりを目指して、奥出雲創生、総力戦のまちづくりを進めてまいります。
奥出雲町長 糸原 保
[移動・出張販売の紹介「くらしの便利帳」より]
※利用されたい方は各事業所へご相談ください