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自治体の皆さまへ

特集 想いを伝える(2)

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三重県いなべ市

■最期のときまで「自分らしく」
介護や医療の現場で、人生の最終段階に立ち会っている2人に話を聞きました。常に進化している介護や医療の現場。昔に比べて選択肢が増えた今、改めて「最期のときをどう迎えたいか」という自分の想いを確かめる必要があるようです。

▽介護のこと
いなべ在宅医療・介護連携研究会
運営委員会委員長
福本美津子さん
看護師、ケアマネジャーとして病院勤務を経て、21年前に介護事業所を開業。
「地域の中で介護と医療がしっかりと連携しているので、一人暮らしの人も在宅医療を受けて最期を自宅で迎えることができます。最期の迎え方の選択肢が増えていくといいですね」

〇在宅に看護を届けたい
看護師として病院で勤務していたとき、入院中の患者さんから「自宅に帰りたい」という声をたくさん聞きました。介護保険制度の開始当初は、介護サービスが少なく、患者さんは最期を病院で迎えるしかない状況でした。
「在宅ケアの中に、看護を届けたい」と思い、2003年に居宅介護支援事業所と宅老所を開業した後、訪問看護を始めていきました。

〇「家で看れない」不安を取り除く
本人が自宅に帰りたいと希望していても、家族が「家では看れない」と病院や施設を選ぶことがあります。家族には家族の生活があり、余暇を過ごすことはとても大切。そのためにも、介護サービスをしっかりと使って、一人一人が人生を充実して過ごしてほしいです。ショートステイなど、家族を支援するためのレスパイトケア※もあります。
病院から家に帰ったあと、ケアマネジャーや訪問診療医、リハビリテーション専門職、薬剤師、看護師、介護職など、各職種の専門性を生かし、ワンチームになって本人を支えています。

〇最期に向き合うこと
反発し合っていた息子と父親が、母親の最期に向けて、心を一つにしていったことがありました。しっかりと死に向き合っていくと、残された人に学びをくれて、再び家族の輪が取り戻されるのだと思います。
一番大事なのは、「最期をどう迎えたいか」という本人の意思です。早いうちから、家族を含めて、本人の想いをみんなで共有する人生会議は、とても大事です。

※レスパイトケア…介護をしている人の負担軽減のために自宅療養者が一時的に入院・入所すること。

▽医療のこと
訪問診療医
平山将司さん
いしが在宅ケアクリニックで訪問診療医として在宅医療に従事。6年前に大安町に「どんぐり診療所」を開院。
「ケアマネジャーや訪問診療医など、相談できる人はたくさんいます。みんなで相談して、より良い選択をしていけたら」

〇心を通わす在宅医療
訪問診療医を志したのは、患者さんと長く触れ合えることができて、心を通わせられると思ったからです。多くの職種の人と連携を取りながら、体調の変化に対応したり、症状を取り除いたりして、最期を家で過ごしたい人の希望に寄り添っています。

〇より良い最期とは
以前、関わった90代の患者さんは、老衰が進んで、話すことができない状況でした。財布の中に紙が入っていて、震える字で「延命治療はしないでください」と書かれていました。それを見た家族は、「本人の気持ちに寄り添いたい」と、点滴をはじめとした無理な延命治療を行わずに、そのまま見守る決断をしました。とても穏やかな最期でした。
私たち訪問診療医は、これから起こる症状や経過をしっかり説明して、本人や家族に納得してもらうようにしています。より良い最期とは、本人や家族も穏やかな気持ちで迎えることだと思います。

〇恐れずに話し合って
「孫の成長を見守りたいからできるだけ長生きしたい」「人のお世話を受けたくない」など、人にはおのおのの想いがあります。自宅で過ごしたい人もいれば、施設を望む人もいます。何を希望するかは人それぞれで、正解も不正解もありません。だからこそ、恐れずに自分の想いを周囲の人に伝えてください。
最期のときをどこで過ごしたいか、食べられなくなったときに胃ろうや点滴などの延命治療を受けたいかなどを、家族で話し合っておくことは大切です。

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