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郷土財としてのネコギギ保全(3)

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三重県いなべ市

▼【地域】子どもたち自体も郷土財
2006年からネコギギについて学んでいる十社小学校。昨年、「野生生物保護功労者表彰」の環境省自然環境局長賞を受賞した同校の取り組みについて紹介します。

◇十社小学校の保全活動
▽学習発表「ネコギギが住みやすい川へ」
ネコギギ保全シンポジウムで、十社小学校の5年生が学習発表会を行いました。スクリーンを使ってネコギギの生態に関するクイズを出題するなど工夫し、集まった約200人の来場者を楽しませました。

安田さん:「ネコギギを大切に思う気持ちが伝えられてうれしかったです」
吉金さん:「聞いている人たちが楽しんでくれてうれしかったです」
田中さん:「とても緊張したけれど、ハッキリと話せてよかったです」

◇昨年の主な取り組み
〇川の生物調べ
5年生から本格的なネコギギ学習が始まり、実際に川を訪れ、生き物探しやネコギギが好む環境を観察します。
〇身体測定や水槽の移し替え
子どもたちが、ネコギギの重さや大きさを計測し、成長具合を記録します。水槽の移し替えのときは、放流する個体との仕分けも手伝います。
〇全校児童や保護者や地域への学習会
市の職員が講師を務め、全校児童に向けたネコギギ学習会を実施。家庭内でも理解を深めてもらおうと、保護者や地域に向けた学習会も行っています。

《interview》
十社小学校 教諭 林さゆみさん
▽自然を大切に思う子どもたち
十社小学校にとって、ネコギギはとても身近なものです。学校の玄関に置かれた水槽にはネコギギが泳いでおり、子どもたちが毎日姿を眺めています。また、5年生からは本格的なネコギギの学習が始まったり、「ネコギギ会」という名称の児童会があったり、学校生活とネコギギには強い結びつきがあります。
私が初めてここに来たときは、子どもたちが自然に対して強い親しみを持っていることに感動しました。1年生のころから、ネコギギを含む生き物全般と身近な環境にいるので、自然やふるさとの姿を大切にしたいという思いがあふれているんだろうなと感じています。

《lecture》
岐阜協立大学 地域創生研究所 森誠一さん
▽保全活動を文化に昇華する
郷土財を守っていくためには、地域住民、行政、研究者という3つの主体が必要です。地域住民は地域での活動を、行政は法や規範を、研究者は科学的な根拠を担います。これを、「環境保全の三位一体」と表現し、それぞれの重なる範囲が大きければ大きいほどに、保全の効果は高まります。この三者が交流できる仕組みさえできていれば、保全活動はおのずと継続されていくでしょう。
郷土財とは、いわば地域の宝物です。地域の特性を表すものであって、必ずしも天然記念物である必要はありません。その意味で、いなべ市の郷土財は、ネコギギやその住みかだけでなく、その保全に取り組む子どもたちも含んでいると言えます。
郷土財をまちづくりの一つの指針とし、ネコギギの保全活動を、「文化に昇華」していくことが望ましいです。

〈環境保全の三位一体〉
A:地域住民(例)十社小学校
B:行政(例)いなべ市三重県文化庁
C:研究者(例)大学研究機関

「私たちが学んだことを、必ず次の5年生に引き継ぎ、みんなでいなべ市の自然を守っていきます」
シンポジウムの最後に、子どもたちが伝えたメッセージです。
郷土の自然を次の世代に残していけるよう、三位一体となって保全活動を継続していく――
そのきっかけが、ネコギギの保全にはあるのではないでしょうか。

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