■一人で抱え込まないで
自分が、そして、家族が認知症になったら…。知っておきたい大切なポイントを、「認知症の人と家族の会」の辻中さんに伺いました。
▽認知症の人と家族の会
三重県支部伊賀名張地区世話人
辻中孝子さん
2005年から5年間、認知症だった実父を介護。看取る1年前に「認知症の人と家族の会」に入会。現在、伊賀名張地区の世話人を務める。
◇知恵を出し合い、励まし合う
私の場合、認知症だった父親の介護を、娘が積極的に手伝ってくれました。そんな娘と「今日は、こんなことがあったよ」と、話をするだけで心が楽になったものです。
一方で、家族や親類に、介護の大変さを分かってもらえない人もおられます。認知症の人が電話応対やあいさつなどをする際、うまく取り繕えることも多く、周りの人は「なんや、大丈夫やん」となってしまう。そうなると、介護している人は、気持ちの持っていきようがなくなりますよね。
「認知症の人と家族の会」は、「自分だけではなかった」と、気持ちを分かり合える心のケアの場となっています。また、受診や薬、介護、お金、お墓のことなど、あらゆる話も出てきます。「こうしたほうがいい」ことはあっても、「こうでなくてはならない」ことはありません。みんなで知恵を出し合い、励まし合っています。
◇周りに助けを求めてほしい
認知症の人に何度も同じ話をされたり、暴言が繰り返されたりする場合、冷静にその場を離れるのも対応方法のひとつですが、つい感情的になることも…。介護する人に気持ちのゆとりがなくなると、認知症の人に乱暴に接するなどして症状が悪化。さらにゆとりがなくなる悪循環におちいることがあります。
大切なのは、決して一人で抱え込まないこと。公的サービスも含めて、できるだけ、周りの手を借りてください。また、日ごろから地域との関係性も大切にしておいてほしいと思います。私の父親は散歩好きで、よく出歩いていましたが、自分がどこにいるのか分からなくなることも。近所の皆さんには、一緒に探してもらったり、家に連れて帰ってもらったりと、本当に助けてもらったものです。
それに、認知症かどうかに関わらず、人と関わることは脳を活性化させますので、出かけられる場所や役割がある場所をいくつも見つけておくといいですね。私もまた、これまで助けてもらった恩返しをと思い、「認知症の人と家族の会」の存続などに奔走しているところです。
◆認知症の人と家族の会
毎月1回、名張市役所か伊賀市役所で、福祉専門職も交えて情報交換しています(開催日はP21「相談」内に掲載)。
◎申込不要。参加無料。認知症の人が参加する場合は、地域包括支援センター(【電話】63-7833)へ事前にご連絡ください。
■妻が認知症に…。笑顔は絶やさずにいたい
▽認知症の人と家族の会 会員
Fさん(市内在住の80代男性)
あっちを向いているうちに、言っていたことを忘れてしまう妻。そんな妻を介護するために、コーラスや山登りといった趣味はやめました。家では妻と話をする以外はテレビをみるぐらい。
一日の始まりは、朝ごはんの支度。7時に妻を起こして、1時間かけて一緒に食べる。洗濯物は、妻がたたむ作業を覚えているので任せています。たたんだ後、どこに何を収納するかの貼り紙は必要ですが…。二人で旅行にもよく出かけますよ。妻が笑ってくれると私もうれしい。大変なこともありますが、やっぱりいないと寂しいですよね。
「認知症の人と家族の会」に参加したのは、診断から1年ほど経った頃。だんだんと2人だけの生活に不安が募っていました。同じような境遇の人たちと出会えますし、何より愚痴をこぼす場ができました。もっと早く来ればよかったと思いますね。会の皆さんと情報交換を続けながら、これからも笑顔を絶やさない夫婦でいたいと思います。
■早期対応をサポート
市では、認知症への早期対応を支援しています。
◇まずはご相談を
自分や家族に認知症が疑われる症状が出てきた…。そんな場合、早期の対応が求められますが、症状や周囲の状況は千差万別。だからこそ、「自分にはこんなサービスが必要」「この場合だとここに相談すればいい」と、的確に判断することは困難です。周りが症状に気付いても、本人は「まだ大丈夫」と支援を拒むなど対応が難しい場合もあります。
まずは、かかりつけ医やまちの保健室、地域包括支援センターなどにご相談ください。必要に応じて、地域包括支援センターに設置の「認知症初期集中支援チーム」がサポート。専門医、保健師、看護師、社会福祉士による多職種のチームが、皆さんの自立した生活に向けて、医療や介護サービス、地域での社会参加に結び付けていきます。
▽初期集中支援チーム
認知症の人(疑われる人)とその家族を専門職が訪問。初期の支援を包括的・集中的に行います(概ね半年間)。
対象:在宅で生活している40歳以上の人で、認知症が疑われている人や認知症の人
※主に、医療や介護サービスを受けていない人が対象ですが、既に受けている人や中断している人も対象になる場合があります。
問合せ:地域包括支援センター
【電話】63-7833
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