■四日市アルコールと健康を考える
ネットワーク副代表
泊ファミリークリニック精神科医師
猪野亜朗(いのあろう)さん
猪野さんは、「アルコールで苦しむ人たちを助けたい」との強い思いから、県内のアルコールと健康を考えるネットワークづくりに尽力。また、国の「アルコール健康障害対策基本法」の制定にも深く関わるなど、長年にわたり患者とその家族に寄り添う活動を続けています。11月の「アルコール関連問題啓発週間」にちなみ、専門家の立場からアルコール依存症について語っていただきました。
▽アルコールの作用
飲酒時には、食事、性行動時よりも5~10倍のドーパミンという快感物質が脳内で放出されるので、飲みたい気持ちの我慢が難しいという特徴があります。環境や遺伝要因が加わると、飲酒行動がどんどん増え、アルコール依存症になります。自分では気づかないうちに進行し、お酒なしではいられなくなっていくのです。しかし、依存症で傷ついた脳は断酒をすれば回復します。
▽「断酒」の難しさと治療法
治療の目標はとにかく「断酒」です。治療法には、「医療機関にかかる」、「断酒の自助グループに参加する」、「お酒を飲まないことを周りに伝える」、「断酒日記をつける」といった方法を取ります。また、お酒を止めることを助けてくれる「抗酒剤」の服用もあります。
断酒が難しいのは、「本人の意志が弱い」や「周囲の人への気遣いがない」のではなく、「断酒によって快感が生じるドーパミンを手放すこと」が難しいというメカニズムにあることを周りの人にも理解してほしいと思います。
▽社会全体で正しい知識と情報の共有を
大切なのは、酩酊(めいてい)行動が増えていく自分の状態に早く気付くことです。しかしながら当事者には酩酊した時の記憶がなく、飲酒問題に気づきにくいため自力での回復は困難です。そのためにも周囲の見守りと説得が大切です。
家族や周囲の人は、本人の心身の健康と幸せを願う「タフな愛」で、病気治療の必要性を本人に分かるように伝えてほしいです。
アルコール依存症は、飲酒する人の意思や性格の問題ではなく、誰もがなる可能性のある病気です。早期発見こそ大切で、社会全体で正しい知識と情報を共有し、専門家へつなげてほしいと思います。
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11月放送のCTY-FM「よっかいち わいわい人探訪」でも紹介します。(放送時間は裏表紙へ)
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