■カタボシイワシ
カタボシイワシはニシン科サッパ属の魚で、当地では定置網で漁獲されます。瀬戸内で「ままかり」と呼ばれるサッパ(ニシン科サッパ属)という魚や、マイワシ(ニシン科マイワシ属)に非常に似ていて、漁師さんが水揚げする魚の種類を分ける選別作業では、非常に紛らわしい魚だと思います。
目の後ろの鰓蓋(えらぶた)のふちに小さな黒い三角形の模様がある、すなわち、肩の位置に星があることから「肩星(かたぼし)いわし」という名が付けられています。ウロコの取れたマイワシには、体の側面に黒い斑点が並んでいますが、カタボシイワシには黒い斑点は無いことも見分ける際のポイントです。
インド・西太平洋と大西洋に広く分布しており、日本近海では、1990年代から2000年頃にはほとんど出現しておらず、21世紀以降に急激に増加したとみられています。当地では、正確な記録はありませんが、少なくとも十数年前から見かけるようになり、近年増加傾向にあると思われます。昨年12月13日に、志摩市の波切(なきり)漁港に死んだ大量のカタボシイワシが浮かんだり打ち上げられたりしているのが見つかったと報道されたことは記憶に新しいかと思います。
マイワシなどに比べてウロコが取りにくく、小骨が多いなどの理由から、食用の利用は進んでいないようです。しかしながら、秋以降になると非常に脂が乗るらしく、DHAやEPAがきっと豊富なことは間違いないでしょう。小骨が多いということは食べればたくさんカルシウムも摂取できると言えます。小骨が多い魚は、骨切りやたたき(なめろう)、酢に漬けて骨を柔らかくするなど、食べやすくする方法があります。増えつつある資源を有効に利用できるよう、調理法や加工方法を工夫するのは大事なことかもしれませんね。
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