■ヘダイ
ヘダイはタイ科ヘダイ亜科ヘダイ属の魚で、当地では主に定置網で漁獲されたものが水揚げされます。インド洋と西太平洋の熱帯、温帯域に広く分布し、日本では本州中部以南に生息しています。体色は銀白色で、近縁種のクロダイ(チヌ)やキチヌ(キビレ)に似ていますが、鱗(うろこ)に沿った黄色っぽい暗色の縦縞(たてじま)が複数あり、顔や鰭(ひれ)も部分的に黄色みがかっていること、鼻先が丸く、上あごが下あごよりも出ていることで見分けることができます。
クロダイやキチヌと同様、若魚の時には全てオスで、成長するにしたがって、一部がメスに性転換します。産卵期は春で、クロダイよりも2週間ほど早いと考えられています。幼魚は内湾、藻場や河口などの汽水域に出現し、甲殻類、ゴカイ類、貝類、貝類の卵等を食べて成長し、その後沖の岩礁域などに生活の場を移します。成魚のエサは小魚、甲殻類のほか、砂を掘ってゴカイ類、貝類も捕食します。大きいもので50cm程度に成長します。投げ釣りやオキアミを使った磯釣りの外道として、特に秋によく釣れます。
マダイのような独特の香りや、クロダイのような磯臭さが少ないため、味が物足りないという評価もありますが、極めて上品でクセがないので、刺身、塩焼き、煮つけ、ムニエル、揚げ物等幅広い調理法に合い、秋から冬の旬のものは程よく脂も乗っています。
定置網漁師さんは漁のあと、獲れたての魚を使い、刺身や大敷汁(魚の身を入れたみそ汁)など、船上で「まかない飯」を造ることがあります。ヘダイはウロコを取って皮を残して柵までおろし、ガスバーナーで皮を炙って刺身を造ります。炙ることによって皮と身の間に隠れていた甘味のある脂が現れ、香ばしくなったヘダイの炙(あぶ)り刺身は、この時期、この魚ならではの絶品料理です。
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