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特集 林業を未来へつなぐ(1)

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三重県度会町

森の中で静かに息づく一本一本の木々。
それは、遥か昔にあなたの先祖が植え、時を重ねて育まれたものかもしれません。
その木々が、今日も成長を続け、未来の世代へとバトンを渡そうとしています。
森林の整備は、単なる活動を越え、人と自然の共生を支える大切な取り組みです。
今回の特集では、度会町の『林業』についてクローズアップします。

■度会町の森林面積は全国・三重県平均を上回る
度会町の総面積は134.98平方キロメートルで、そのうち森林面積は112.95平方キロメートルに達し、全体の83.6%を占めています。これは全国平均67.0%や三重県平均64.3%を大きく上回る数字です。
また、森林のうち66.3%が人工林であり、こちらも全国平均40.3%、三重県平均61.7%を上回っています。

○森林・人工林面積割合の比較

■森林管理と林業
森林面積が広いこの地域では、森林を適切に管理することが、水資源の保全や災害リスクの軽減において極めて重要となります。この森林管理には林業従事者が欠かせない役割を果たしており、その活動が、地域の持続可能な暮らしに寄与しています。このように、林業という産業の持続は、私たちの生活に大きく関わっています。

■林業の現場では
林業は、人口減少や高齢化、木材価格の下落といった厳しい現実に直面しています。国勢調査によると、度会町の林業従事者は、昭和55年の118人をピークに、平成12年42人、令和2年には31人へと減少し、約4分の1にまで落ち込んでいます。しかし、こうした困難な状況の中でも、技術や人材の育成は力強く行われています。
ベテラン従事者は、その豊富な経験と知識を若い世代に受け継ぎ、次世代の育成に努めています。若手従事者は、ベテランの技術を学びながら、未来を担う新たな担い手として成長を目指しています。
次のページ以降で、実際の現場を覗いてみましょう。

■教えを受け継ぎ、自ら磨く―それが道しるべになる
株式会社丸中林業
中村昇暉(しょうき)さん(麻加江)
丸中林業に勤めて6年目の中村さん。チェーンソーを使った伐採作業を主に行い、“早く一人前になりたい”との思いから、日々先輩や同僚から学び、スキルを磨くことを追求しています。

○日々学んで、成長を重ねる
初めて林業現場に足を踏み入れたとき、目の前に広がる自然の壮大さに圧倒されました。大きな木々は空に向かってそびえ立ち、耳を澄ませば、風の吹き抜ける音が響く。しかし、その美しさの裏には危険が潜んでいることをすぐに実感しました。木を伐採する瞬間の迫力や、周囲の環境に対する緊張感は想像以上でした。林業はただ木を切る仕事ではなく、適切な技術を学び、それを身につけることで、作業をより安全に、そして効率よく行うことが重要です。初めての作業では、先輩たちの技術や判断力に驚かされました。彼らは木の状態や周囲をしっかりと観察し、どの木を伐採するか、どの方向に倒すかを冷静に決定しているのです。その判断は経験に基づくものであり、私も少しずつその技術を学びたいと強く思いました。すべての木は教科書どおりには切れません。木の傾きや倒す方向、さらには腐食の有無など、さまざまな要素を考慮する必要があります。例えば、左側に傾いた木を正面に倒したい場合は、少し右側に向かって受け口を入れることや腐っている木は追い口を入れすぎないことも教えてもらったことの一つです。
どれだけ教えてもらっても、自分のものにしないと意味がありません。先輩たちがいろいろなことを教えてくれる中で、自分に合った技術を見極め、それを磨いていかなければなりません。私たち若手従事者は、先輩たちから教わりながら、自分自身の安全を守りつつ、仲間や自然も守る責任があります。これからも林業の技術を学び続け、しっかりと身につけていきます。私も先輩たちから技術を教わったように、一人前になったときには、次の世代にその技術を伝えられるよう、道しるべとなる存在になりたいと思います。

○切磋琢磨する同僚の存在
会社には同い年の同僚がいます。彼とは林業での経験を共有しながら、日々成長に向け取り組んでいます。最近では、目立ての方法について意見を交わしました。目立てとは、チェーンソーの刃を鋭くする作業で、刃の切れ味を保つことが伐採作業の効率や安全性に直結します。鈍った刃では切断が困難になり、余計な力が必要になるため、定期的な目立ては大切です。具体的には、刃の角度や使用する工具について話し合い、最適な方法を探求しています。また、定期的なメンテナンスのタイミングについてもお互いの経験を基に議論しながら、技術を向上させるための情報を交換しています。
このように同僚と切磋琢磨することで、より良い成果を出せると感じています。これからも互いの意見を尊重しながら、技術の向上を目指していきたいと思います。

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