町に広がる田園風景。5月のゴールデンウィークを過ぎると、黄色い北勢線が映る水田の水面。9月には農家が丹精込めて栽培した黄金色に染まる稲穂。このように私たちの身近で行われている農業ですが、実は多くの課題に直面しています。今回は、その課題を先端技術を活用して解消しようとする取り組みや農業が持つ多面的な役割について紹介します。
■時代とともに変わりゆく農業
米は私たちの主食であり、稲作は古くから続く日本を代表する農業です。1960年代には食の欧米化に伴う「米離れ」によって国内消費が減少し、国は1970年ごろから米の価格維持を目的とした減反政策を進めてきました。しかし、市場での競争力がつかないことなどを理由に、2018年度に廃止されました。
現在、米はほぼ100%国内産でまかなわれているといわれています。それでも急激な訪日客(インバウンド)の増加や日本食ブームなど、いくつもの要因が重なり、今年の夏には国内で米の在庫が不足し、スーパーマーケットなどの棚から消えた、いわゆる「令和の米騒動」が起こりました。
また、農林水産省によると、日本の令和5年の食料自給率は、カロリーベース(生きるために必要なエネルギー量に換算して求めた数値)で38%と低く、米以外は輸入品に頼る状況です。しかし、近年の国際情勢や歴史的な食糧・エネルギー価格の高騰などを鑑みると、将来にわたって食料を安定的に供給していくためには、国内で生産できるものはできるだけ国内で生産し、消費していくことが大切です。
■町の農地面積は全体の約3割米の栽培が大部分を占めています
東員町の農業は、行政面積の約3割が農地で、主に米・麦・大豆を栽培しています。そのうち約9割が水田で、令和4年の東員町の農業産出額※13億4千万円のうち2億5千万円が米となっています。
町内では主にコシヒカリやキヌヒカリ、夏色などの品種や、最近では三重県産ブランド米「結びの神(三重23号)」も栽培しています
※1出典:農林水産省「令和4年市町村別農業産出額(推計)」
■選ばれた米づくり農家の自信作「結びの神」
猛暑などの気候変動に強く、三重県の風土に適する米として開発された品種「三重23号」のうち、こだわりの農法で生産され、厳しい品質基準に合格した米のみが「結びの神」として出荷されます。米粒が大きくしっかりしているため、ふっくら美しい炊き上がりで、冷めてもおいしく、噛みしめるほどに味わいが広がります。県内外の寿司店やホテル、飲食店などで利用されていて、県内の主なスーパーマーケットで購入できます。2021年の新嘗祭では、町内の農業者から天皇陛下に献上されました。
■農業者の高齢化と減少による担い手不足は日本の農業が長く抱える課題の1つ
私たちの「食」を支える農業ですが、農業者の高齢化や減少、新規農業者の参入が少ないことによって生じる「担い手不足」が課題となっています。
農林水産省が5年ごとに行う統計調査(農林業センサス)では、平成27年時点で175.6万人であった基幹的農業従事者※2が、令和2年時点では136.3万人になりました。5年で約39万人が減少したことになります。また、令和2年時点の基幹的農業従事者の平均年齢は67.8歳で、今ではさらに高齢化が進んでいるといわれています。
東員町の認定農業者数※3は、ここ数年多少の増減はあるものの横ばいで、年齢層は約9割が60歳以上となっています。
また、従来の農業は、農業者が培ってきた技術や人手に頼る作業を前提としたものであるため、熟練の農業者が長く培ってきた経験やノウハウを、新規農業者が短期間で習得するのは難しく、農業参入へのハードルとなっています。
従来の農業方法と担い手不足が重なることで、1人あたりの作業量が増加し、長時間労働につながるなど、農業者を取り巻く労働環境は厳しくなっています。
※2 基幹的農業従事者とは、普段仕事として主に自営農業に従事している人。
※3 町の基本構想に示された農業経営の目標に向け、経営の改善を進めようとする計画について、県・町・農協などの関係機関から認定を受けた農業者のこと。
東員町の認定農家者数と年齢層(令和6年度)
問合せ:産業課
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