日本の総人口は、毎年減少していますが、令和5年9月現在の65歳以上の人口は、3,623万人で、総人口に占める割合は29.1パーセントと過去最高になり、超高齢社会と言えます。
また、本市においても総人口は減少していますが、65歳以上の人口は増加していて、総人口に占める割合は、国よりも高い約33パーセントと、3人に1人の割合になっています。
しかし、一般的に定年と言われる年齢を過ぎても、元気に働いている人たちがいます。特に伝統工芸に携わる人たちは『職人』として自身の技を磨き続けながら継承にも力を注いでいます。
今回の特集では、超高齢社会の中で、伝統を守り、伝えている職人のものづくりを通して、豊かに生きるヒントを紹介していきます。
レポートをしてくれるのは、青嶺中学校3年生の4人です。4人は実際に伝統工芸品を作っている作業場や工房を訪れ、取材したり、ものづくりを体験したりする中で、職人の熟練された技や熱意、人柄などに触れてきました。
■青嶺中学校3年生の4人が、市民レポーターになって取材をしてきました!
・生島海斗(しょうじまかいと)さん
・吉田敦紀(よしだあつき)さん
・前田真歩(まえだまほ)さん
・松園心響(まつぞのみこと)さん
◆職人に聞く(1)
4人のレポーターは、今回、職人の仕事場3か所を訪ねました。
ここからは、実際にレポーターたちが現場で聞いてきた、職人たちの生の声をお届けしていきます。
▽松尾克美(かつみ)さん(74歳)
(有限会社 建具家具工房松尾)
中学卒業後に建具職人になり、弟とともに木製建具を制作し、内閣総理大臣賞など多数の賞を受賞。厚生労働大臣が表彰する卓越した技能者の通称である『現代の名工』の称号を持っています。
Q.仕事を始めたきっかけと仕事の内容は何ですか
父と伯父が建具職人で、中学生の頃から家業を手伝い、自然に父と同じ道に進みました。今年でこの道60年になります。
外部木製建具の障子やドア、襖(ふすま)など、住宅に必要な木製建具を作っています。
Q.仕事のやりがいは何ですか
父と伯父が働いていたときから長きに渡って、多くの人たちから仕事の依頼を受けています。私の代までこの仕事を続けることができているのは、依頼してくれる人たちがいるからこそで、深く感謝し、この人たちのためにがんばろうという気持ちが、やりがいになっています。
Q.ものづくりの魅力を教えてください
建具は、生活の必需品です。私たちが、心を込めて良識的な仕事をすることで、建具が暮らしの中に息づき、建具もきっと喜んでいると思っています。何よりも、お客さんが喜ぶ姿を見ると、苦労が吹き飛びます。
Q.今の目標は何ですか
建具職人になって『全国建具展示会』に出会ってから、一度は出品したいという夢を持ちました。初めて出品してから、25年続けて出品しています。展示会を通じて全国各地の名工の皆さんと交流を持ち、いろいろなことを教えてもらうことができました。
これからは私が、受け継いだ匠の技を守り若い世代につなぎ、恩返しをすることが使命だと思っています。
Q.元気の秘訣(ひけつ)は何ですか
家族で仲良く同じ仕事に携わっていることです。兄弟3人とも同じ建具職人の道に進み、弟たちが私の右腕と左腕となり、支えてくれました。そのおかげで、全国建具展示会に毎年作品を出展することができていたと思います。1人ではできない3人の職人の技のたまものです。
Q.子どもたちにメッセージをお願いします。
まずは、身近な建具や家具、組子に興味を持ってほしいです。また、楽しく働くことの大切さや、ものづくりのすばらしさに気づき、伝統の技を受け継いでいってくれる人が1人でも多く出てくれたらこんなにうれしいことはありません。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>