◆肝機能障害
健診を受けて、肝機能の異常を指摘されることはかなり多いです。特に症状がないのにどうしてだろうと心配されるのではないでしょうか。
健診の肝機能検査の項目には、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPがあります。これらが基準値より高ければ、肝臓に何らかの病気がある可能性が高いということです。
まずは肝臓の重要な2つの機能について述べます。
1.肝臓のもっとも重要な機能といえば、“物づくり工場”だということです。腸から吸収された栄養物はまずは肝臓に運ばれます。そして、ここで生きるために必要なさまざまな物質が作られます。その仕事を担うのが肝細胞です。そのために肝細胞には多数の酵素が含まれています。ASTとALTは必要なアミノ酸を作るための酵素です。肝細胞が壊れると血液中にAST、ALTが漏れ出て、その値が高くなります。
2.肝臓は解毒排泄も行っています。腎臓が体の中に生じた老廃物を尿として体外に排泄している臓器であることは、誰もが知っていると思いますが、肝臓も体の中に生じた有害物質を処理し、胆汁として胆管を通して小腸へと排泄しています。この仕事を担っているのが、γ-GTPという酵素です。
この解毒排泄系に障害が生じると、血液中のγ-GTPが高くなります。したがって、下記のように理解できます。
・AST、ALT高値は肝細胞の障害…ウイルス性肝炎や脂肪肝などが疑われる。
・γ-GTP高値は解毒排泄系の障害…アルコール性肝障害や胆管炎などが疑われる。
AST、ALT、γ-GTPに異常があれば、より詳しい血液検査と画像検査(エコー検査、CTやMRI検査など)などの検査を行うことで確定診断にたどり着きます。肝機能異常をきたす病気はいろいろありますが、一般的に多いのは下記の3つです。
1.ウイルス性肝炎
B型およびC型慢性肝炎は、症状がなく、ゆっくりと進行し、肝硬変、肝がん、肝不全へと進行して死に至ります。これまで最も恐れられてきた肝臓の病気でしたが、近年、新薬が登場してC型慢性肝炎は治るようになりましたし、B型慢性肝炎もワクチンが開発され、感染予防ができるようになったので、新規患者は無くなりつつあります。近い将来、B型およびC型慢性肝炎は無くなるのではと思われます。
2.アルコール性肝障害
アルコール性肝障害ではγ-GPTの値が高くなります。γ-GTPのみの高値(それでも100未満まで)だけなら、まあまあ容認できるでしょうが、ASTとALTも高くなれば問題です。
肝細胞がダメージを受けていると考えられるからです。そのような状態が長年続けば肝硬変になる可能性があります。
3.脂肪肝
最近、非常に増加しているのが脂肪肝です。20~30歳代の若い人にも増加しています。以
前は、脂肪肝では死ぬようなことはないという認識でしたが、最近は脂肪肝でも一部には慢性肝炎、肝硬変への進行もありうるということです。脂肪肝と診断されたら、生活習慣の改善を心掛けつつ、定期的な検査を受けてください。
国民健康保険脊振診療所 牛島 幸雄
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