■新才愛宕神社の雨乞い成就石燈籠
丹波市文化財保護審議会委員 山内順子
春日地域新才(しんさい)の愛宕神社境内に、石燈籠(いしどうろう)があります。
その石燈籠の竿(さお)の部分に文字が刻まれています。正面と、向かって右側面の文字から「石燈籠を一つ造立して元禄十二年(1699年)の良い日に奉納した」と読み取れます。また、左側面には「雩成就處新才村(あまひきじょうじゅのところしんさいむら)」と刻まれており、これが新才村の人々が石燈籠を奉納した理由です。
「雩」という文字は「あまひき」と読みます。雨を引っ張ってくるという意味を持ち、雨乞(あまご)いのことを指します。
つまり、新才村の人々が地域に雨が降るよう愛宕神社に祈ったところ、見事願いが叶ったので、お礼に石燈籠を奉納したというのです。
新才の周辺には、朝日天満(てんまん)神社(1693年)や、舟城(ふなき)神社(1694年)、多田加茂(ただかも)神社(1732年)などにも、降雨の願いがかなったと記された石燈籠があり、牛河内(うしがわち)の賀茂(かも)神社には雨乞い成就の感謝を込めて1724年に奉納された手水鉢(ちょうずばち)があります。
現在のように気象予報が発達しておらず、順調な降雨がなければ死活問題にも繋がった時代。人々は日照りが続いて困った時、神さまに降雨を祈り、願いが叶うと感謝を形に表していたことがわかります。同時に、これらは旱魃(かんばつ)という災害の貴重な記録でもあります。データを集めれば旱魃の周期なども見えてくるかもしれません。
皆さんもぜひ、近くの石燈籠や手水鉢に刻まれた文字を確認して、地域の歴史を感じてもらえたらと思います。
問合せ:社会教育・文化財課(山南庁舎内)
【電話】70-0819
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