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特別版 お城EXPO in 姫路 国宝五城サミット

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兵庫県姫路市

9月16日にアクリエひめじで開催した「国宝五城サミット」。その内容の一部をお届けします。

■コーディネーター
・城郭考古学者 千田嘉博さん

■参加者
・長野県松本市長 臥雲義尚さん
・愛知県犬山市長 原欣伸さん
・滋賀県彦根市長 和田裕行さん
・島根県松江市長 上定昭仁さん
・兵庫県姫路市長 清元秀泰

■国宝五城の魅力
千田:かつて日本には3万を超えるお城がありましたが、今でも天守が残っているのは12城だけ。中でも国宝五城は江戸時代初期以前の築城で、戦国の知恵の結集です。まずはその魅力を紹介していただきたいと思います。

清元:姫路城は、白漆喰(しっくい)が多く使われた連立式天守。どの角度から見ても非常に美しく、また守りも堅牢(けんろう)なお城です。「平成の大修理」後は「白すぎ城」とも言われましたが、白漆喰を使ったのは、火災に強いためだと考えられます。

上定:松江城は五城の中で、築城も国宝指定も最も新しい城。築城年が不明だったため、なかなか国宝になれませんでしたが、必死の調査が実を結び、ついに指定されました。構造に特徴があり、柱は姫路城のような1本の通し柱ではなく、2階ずつの通し柱。耐震性に優れた当時の最先端の工法です。

和田:彦根城の天守は小規模ですが、さまざまな種類の破風(はふ)が組み合わさり、意匠に富んでいます。また、五城の中で唯一、唐破風の飾り金具などが金箔(きんぱく)押しになっています。金箔の剥がれたしゃちほこは、何とか復元したいと思っています。CMにも使われた名勝庭園・玄宮園から望む天守は絶景です。現在、世界遺産登録を目指しています。

原:犬山城は小さいですが、五城の中で最古の天守。その後の多くの城のモデルにもなりました。また、山の上にあって眺めは最高。木曽川と断崖絶壁に守られた「後堅固(うしろけんご)の城」で、攻めることが難しいと言われています。五城の中で唯一、民間所有の城でもあります。

臥雲:松本城の魅力は、黒の格好良さ。大河ドラマにも登場した石川数正が築城しました。豊臣時代に造られた天守と、徳川時代に造られた月見櫓(やぐら)があり、戦の時代から平和の時代へと移行する城郭文化を楽しめます。北アルプスの山々を背景にした景観は格別です。

千田:姫路城は白漆喰の大天守、連立式という究極の天守の形で、非常に魅力的です。松江城は、強い構造を実現した江戸時代の人の知恵の結集。彦根城は、お城や塀も含めて、近世武家文化の全体像を体感できます。犬山城は全国の天守の源流であり、戦略の要地でもある歴史的景観が素晴らしい。松本城は黒い城の日本代表で、毎年、黒漆を塗り替えて、美しく保たれています。それぞれに特色があって、非常に素晴らしいですね。

■解体修理で分かったこと
千田:お城が今に残っているのは、長年にわたる維持管理のおかげ。中でも、解体修理で新たに分かったことを教えてください。

臥雲:松本城があるのは、湧き水が豊富で湿地のような場所。昭和25年からの大修理では、縁の下の仕組みが非常に頑丈で、地盤対策に工夫が凝らされていることが分かりました。無理をしてでもこの場所に築城したことが、現在の松本市の発展につながっています。

原:犬山城の建物は、美濃金山城から移築されたという説があるほか、増築についても諸説あります。しかし、修理の際に材木を調べ、移築の痕跡はないこと、全層が同時期に建築されたであろうことが分かりました。ただ、移築説も消えてはおらず、いろいろな見方ができるのが歴史のロマンだと思います。

和田:彦根城は昭和32年から解体修理を行い、天守の部材は他の城から流用していることが分かりました。大津城の天守を移築したほか、佐和山城などの部材をリユース。SDGsの先取りと言えます。

上定:松江城の昭和25年からの解体修理では、築城時に地鎮の祈禱(きとう)に使われた品が多く見つかりました。また、リユースされた部材が見つかり、松江城も「持続可能な城」と言えます。

清元:姫路城は昭和・平成の大修理以外にも常にどこかを修理していて、そのたびに発見があります。池田輝政の築城では秀吉の石垣を基礎にしたことが分かったほか、天守の最上階の壁の中に鴨居(かもい)が見つかりました。当初は窓として計画したものの、耐震性を高めるためにふさいだのではないかと言われています。

千田:お城の修理は、多くの発見が得られる重要な機会。良い修理をして、秘密を解き明かしてほしいですね。

■後世に継承するために
千田:お城を残すだけでなく、活用し、後世に継承する取り組みについて教えてください。

清元:後世への継承には、ハードだけでなくソフトも大切。生きた歴史を継承するため、姫路藩主・酒井家の大名行列や千姫の衣装を再現するリビングヒストリー事業を行っています。

上定:昨年から松江城の床磨きを行っています。また、大名行列の再現や、行燈(あんどん)で堀を照らす夜のイベントなどを企画しています。

和田:保存と活用のバランスが大切。映画のロケ地としても有効に活用しています。これからも彦根城を活用しながら守っていきます。

原:「犬山城みらいサポーター」の子どもたちがお城の床磨きをしています。城下町は道路の拡幅を行わず、江戸時代のままの町割りが残っています。これらを生かした保存と活用の計画を策定中です。

臥雲:松本城でも市民による天守の床磨きを行っています。また、市民の楽しみにつながる多彩なイベントも開催。さらに、今後7年ほどかけて堀を浚渫(しゅんせつ)し、令和12年までに水をたたえた堀を復元したいと考えています。

千田:私たちもお城を見に行くだけでなく、歴史を生かした取り組みに参加することで、本物の文化財の歴史を体感でき、お城を守る一員になれます。これは以前にはなかったこと。これから、もっと楽しい国宝五城の世界が広がります。本日は素晴らしいサミットになりました。

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