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特集 2023・12・11―姫路城世界遺産登録30周年 世界遺産が生まれた日(1)

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兵庫県姫路市

「世界遺産」という言葉は、今では知らない人はいないと言ってもよいほど、当たり前のものとなりました。姫路城が法隆寺と共に、日本初の世界遺産に登録されてから30年。この機会に、改めて世界遺産“Himeji-jo”を見詰め直してみましょう

■そもそも世界遺産とは?
世界遺産とは、すべての人類にとって価値のある遺産を、破壊などの脅威から守るための国際的な協力体制を確立することを目的に、昭和47(1972)年、国際連合教育科学文化機関(UNESCO(ユネスコ))総会で採択された世界遺産条約(世界の文化遺産及(およ)び自然遺産の保護に関する条約)に基づき、「世界遺産一覧表」に記載された文化・自然遺産をいいます。
つまり、人類にとっての宝物。世界を見渡したとき、各国のさまざまな文化を表すものとして、誰もが大事にし、後世に残すべきと思うもの、それが世界遺産です。

■姫路城が選ばれた理由(わけ)
姫路城がなぜ世界遺産に選ばれたのかを語る前に、ぜひ覚えてほしいキーワードがあります。それは、「顕著な普遍的価値」。英語ではOutstanding Universal Value(略して「OUV」)です。世界遺産になるには、このOUVを持っていることを証明しなければなりません。
姫路城は「木造建築の傑作で、白漆喰(しっくい)の使用、多くの建築群と屋根の重なりが築く繊細な構成の両面において、合理的機能を卓越した真実の魅力に結合させている」ことや、「日本の木造城郭建築の最高点を表し、その重要な特徴を損傷なく保存している」ことなどが評価され、OUVが認められたのです。

■登録に至るまでの秘話
日本が世界遺産条約を批准したのは平成4(1992)年。同時に、世界遺産への登録推薦書の提出期限が間近に迫っていました。姫路城と法隆寺が最初の推薦候補となった理由は、まず国内では誰もがその価値を認めるものであったこと。加えて、文部省(当時)が直接保存修理を行い、価値を証明する資料がそろっていたことも大きかったと言われています。
とはいえ、推薦書の作成など、登録手続きはこれまで誰も経験したことのないゼロからの作業。文化庁をはじめ、当時の関係者の苦労は並大抵ではなかったそうです。
登録を審査した第17回世界遺産委員会は、コロンビア共和国、カリブ海に面した南米屈指のリゾート地・カルタヘナで開催されました。姫路城の登録審査が行われたのは、平成5(1993)年12月10日。日本との時差は14時間です。日付が変わってようやく届いた決定の一報は、姫路城迎賓館で今か今かと待ちわびる戸谷松司市長(当時)に届けられ、姫路城の夜空に万歳の声が響き渡りました。

■世界遺産を維持する取り組み
姫路城のような木造建造物は、手入れをしなければ30年と持たずに朽ちていきます。このため、姫路城は防御のための城として機能していた江戸時代はもちろん、その機能が失われた明治以降も、先人たちが手を入れ、見守って、何とか維持され続けてきました。こうした長い修理の歴史に加えて、近年の大きな修理としては、建造物をすべて解体し、再び組み直す「根本修理」を行った「昭和の大修理」、大天守の瓦・壁などを修復・新調した大天守保存修理(いわゆる「平成の大修理」)があります。
姫路城の国宝・重要文化財は合計で82棟と、全国でも屈指の数。30年ごとに手を入れるとすると、単純計算でも毎年2・3棟の修理が必要です。いつもどこかで保存修理工事が行われている理由がお分かりいただけるでしょう。
また、姫路城は24時間休むことなく警備されています。さまざまなセンサーなど、最新の機器も用いていますが、最終的には人の目で確認するという地道な作業も続けられているのです。

■姫路城が世界遺産であり続けるために
これまで姫路城は、伝統的な保存技術・材料を用いるなど、日本の保存修理の優れた仕組み、それらを支える多くの人々のたゆまぬ努力によって、OUVが維持されてきました。一方、世界に目を向けると、地震や集中豪雨などの自然災害、さらには各地で起こる戦争や火災など、世界遺産への差し迫った脅威が増大しています。
現在では、世界遺産登録を目指す場合、そうした脅威にも対応できるよう、長期間にわたる学術研究や、住民を含めた地域全体で対応策を検討するなどの地道な努力が求められるようになっています。姫路城は、幸か不幸かそうした道のりを経ることなく世界遺産に登録されました。
姫路城については、どうしても大天守のある中核部分に関心が集中しがちです。しかし、世界遺産の登録範囲は周囲に広がる107ヘクタールという広大なもの。全体の価値は目に見える建造物や石垣、土塁、堀だけでなく、発掘調査をしなければ分からない地下の遺跡や古文書などの関連資料を含め、多種多様な要素から構成されています。
5年10月現在、世界遺産の登録件数は、世界全体で1,199件、国内で25件。姫路城が世界遺産であり続けるためには、今ある価値を一層磨きながら、潜在的な価値を見いだすなど新しい魅力を創出していくこと、そして、それを広く世界に伝えていくことが、私たち市民にも求められているのです。

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