■ササユリ(ユリ科)
薫り高いササユリは新温泉町の町花にもなっています。日本特産のユリ科の球根植物で、学名も(Lilium japonicum)リリウム・ヤポニクム、つまり(日本百合)となっています。分布は本州中部以西から四国、九州ということですが、自生する地域によって大きさや花色に微妙な変化があり、名前もサユリ、ヒュウガササユリ、などなど地域ごとに名前を変えて棲み分けています。
町が位置する近畿地方のものは普通のササユリ。高さ50~80cmで直立しますが、花時は重みで斜めになるものもあります。葉は互生しており、長さは8~15cmで笹の葉に似ていることから、笹百合の名前があります。花被片(花びら)は薄いピンク色で内片3、外片3の6枚で長さ10~15cm、外片の方が幅は狭く、先は反り返り花粉の色は赤褐色です。朔果(さくか)が熟すのは11月頃で、弾(はじ)けた種子は風に乗って広がっていきます。種子が地上で芽を出すのは大抵翌々年の春で、花の咲くのは野生の場合、およそ7年以上もかかるとのことです。
なお、古事記には「山由理草」の名前で記されており、古くから神社の催しなどにササユリが用いられたことが記されています。現在も京都などの複数の神社では催しの際に用いられている様子が報道などで見られます。そのように親しまれてきたササユリも近年は盗堀(とうくつ)や鹿の食害に遭い、数を減らしています。
一方で保護活動やササユリの育成を続ける植物園や公園も多くあるようですが、やはり山道などで咲いているササユリには凛とした気高さがあり、出逢えた時はハッとして清々しい感動を覚えます。
文・写真 中澤博子さん
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